断片話
◆往々にして導入部とは雑
(トル呂+戦乙女)
「それではこれより会議を始めます」
ラグナロクは様々な策略が飛び交い、こじれた末に中止となり。
魂の完全消滅した者達は、全員が神々の手により戻されて久しい。
そして、神々に『めっ!』と怒られたワルキューレ達は今、一つの部屋に集まっていた。
長姉ブリュンヒルデを議長とし、一堂に会した戦乙女十三姉妹。
いったい何を議題とするのかと末妹ゲルは固唾をのんで集中していた。
「議題は――ラグナロク先鋒組のデートプランについてです!!」
「えぇええええ!?」
突然何を言い出すのかと驚きの声をゲルは上げるが。
他の姉達は当然のごとくといった面持ちで聞いていた。
「ゲル、どうかしましたか?」
「あ、あの、ヒルデお姉さま……デート、プランっスか?」
「ええ、これも人類存続の票のためです」
いまいち分かっていない様子の末妹をよそに、ブリュンヒルデは端末を取り出し。
手元の端末を操作し映し出すのは、ラグナロクに出場した神々と人間達。
その中でもラグナロクの先鋒組をピックアップして中央へと表示させた。
「ラグナロクが中止となった今、人類は仮初の猶予を与えられた状態」
明確に示されたわけでもなく、ただ現状維持で引き伸ばされただけの存続。
いつまた神々の会議の議題にあがるのかすら不透明。
戦乙女達は一蓮托生の神器錬成を禁止され。
再度ラグナロクを起こすことも不可能。
仮に人類滅亡が可決されれば、今度こそ防ぐ手段はない。
「そこで、我が戦士達には各対戦相手の神と仲良くなってもらう予定です」
その先駆けとして、ラグナロク先鋒組をより強固にくっ付ける。
食えないジジイ代表のようなゼウスよりも、全てを見下し突き放す孤高のポセイドンよりも。
呂布奉先を好敵手とし、戻ってからは常に傍にいる雷神トールの方がはるかに難易度は低い。
「現状、最後の一押しがあれば! ほぼ確実にトール様は人類存続派へと傾くでしょう!!」
ゆえにデートのお膳立ては不可欠。
鬼気迫る表情で熱く語る長姉ブリュンヒルデは、拳を握りしめながら断言した。
人類代表側を『神殺しの十三人』とブリュンヒルデは呼んでいたが。
悩殺的な意味も含むのだろうかとゲルは遠い目をしたくなった。
「……でもヒルデお姉さま。それだとトール様の一票しか入らないっスよね?」
現実逃避をしかけていたゲルだが、ふと浮かんだ疑問を口にした。
塵も積もれば山となるにしても、いくら何でも気が長すぎはしないか。
そんな些細な問いかけに対しブリュンヒルデは一変して真面目な顔へと戻った。
「ゲル、たった一票でも人類存続の前には貴重な一票。トール様が存続票を挙げれば。
他の神々も快く票を入れてくれることでしょう。それはもう快く! 存続への一票を!」
「恐怖政治みたいな発想っスね……」
絶対に快くではないだろうなと、雷神トールの睨むような視線を思い出しゲルは呟いた。
■
「こんなの、あの坊やのデートプランを考える方が楽じゃない?」
雑誌を眺めていたフレックが何気なく不満げに零した一言に対し。
ブリュンヒルデは聞き分けの悪い子をさとすような慈愛の笑みを浮かべた。
「ゲボカス野郎にヘラクレス兄様はもったいない。
(ヘラクレス兄様はそもそも人類存続派ですから)」
「ヒルデお姉さま! たぶん本音と建前が逆っス!!」
(2020/10/11)
(トル呂+戦乙女)
「それではこれより会議を始めます」
ラグナロクは様々な策略が飛び交い、こじれた末に中止となり。
魂の完全消滅した者達は、全員が神々の手により戻されて久しい。
そして、神々に『めっ!』と怒られたワルキューレ達は今、一つの部屋に集まっていた。
長姉ブリュンヒルデを議長とし、一堂に会した戦乙女十三姉妹。
いったい何を議題とするのかと末妹ゲルは固唾をのんで集中していた。
「議題は――ラグナロク先鋒組のデートプランについてです!!」
「えぇええええ!?」
突然何を言い出すのかと驚きの声をゲルは上げるが。
他の姉達は当然のごとくといった面持ちで聞いていた。
「ゲル、どうかしましたか?」
「あ、あの、ヒルデお姉さま……デート、プランっスか?」
「ええ、これも人類存続の票のためです」
いまいち分かっていない様子の末妹をよそに、ブリュンヒルデは端末を取り出し。
手元の端末を操作し映し出すのは、ラグナロクに出場した神々と人間達。
その中でもラグナロクの先鋒組をピックアップして中央へと表示させた。
「ラグナロクが中止となった今、人類は仮初の猶予を与えられた状態」
明確に示されたわけでもなく、ただ現状維持で引き伸ばされただけの存続。
いつまた神々の会議の議題にあがるのかすら不透明。
戦乙女達は一蓮托生の神器錬成を禁止され。
再度ラグナロクを起こすことも不可能。
仮に人類滅亡が可決されれば、今度こそ防ぐ手段はない。
「そこで、我が戦士達には各対戦相手の神と仲良くなってもらう予定です」
その先駆けとして、ラグナロク先鋒組をより強固にくっ付ける。
食えないジジイ代表のようなゼウスよりも、全てを見下し突き放す孤高のポセイドンよりも。
呂布奉先を好敵手とし、戻ってからは常に傍にいる雷神トールの方がはるかに難易度は低い。
「現状、最後の一押しがあれば! ほぼ確実にトール様は人類存続派へと傾くでしょう!!」
ゆえにデートのお膳立ては不可欠。
鬼気迫る表情で熱く語る長姉ブリュンヒルデは、拳を握りしめながら断言した。
人類代表側を『神殺しの十三人』とブリュンヒルデは呼んでいたが。
悩殺的な意味も含むのだろうかとゲルは遠い目をしたくなった。
「……でもヒルデお姉さま。それだとトール様の一票しか入らないっスよね?」
現実逃避をしかけていたゲルだが、ふと浮かんだ疑問を口にした。
塵も積もれば山となるにしても、いくら何でも気が長すぎはしないか。
そんな些細な問いかけに対しブリュンヒルデは一変して真面目な顔へと戻った。
「ゲル、たった一票でも人類存続の前には貴重な一票。トール様が存続票を挙げれば。
他の神々も快く票を入れてくれることでしょう。それはもう快く! 存続への一票を!」
「恐怖政治みたいな発想っスね……」
絶対に快くではないだろうなと、雷神トールの睨むような視線を思い出しゲルは呟いた。
■
「こんなの、あの坊やのデートプランを考える方が楽じゃない?」
雑誌を眺めていたフレックが何気なく不満げに零した一言に対し。
ブリュンヒルデは聞き分けの悪い子をさとすような慈愛の笑みを浮かべた。
「ゲボカス野郎にヘラクレス兄様はもったいない。
(ヘラクレス兄様はそもそも人類存続派ですから)」
「ヒルデお姉さま! たぶん本音と建前が逆っス!!」
(2020/10/11)