断片話

◆温かい手


「何をしてる?」
「ん? なんとなくじゃ」

頭を撫でられたので質問をすると、相手もわかっていない様だった。

「何のつもりだ」
「さっき言ったじゃろ、なんとなくじゃ」

バッサリと切り捨てるように答えられ返す言葉もなかった。
手袋越しの感触。他人が自分に触れている事実。
それでも、不快には思わなかった。

「何が楽しいんだか……」

小さく呟き、暫くは相手の好きにさせるかと思った。


(2011/03/21)
11/13ページ