小話

【物の喩え】


「血の色だな」
「何がじゃ?」

大きな目を向け、何の事だと言わんばかりに振り返る椎名。
透き通るような紅い瞳を眺め、綺麗だと思いながら答えを返した。

「お前の目の色が」
「……嫌な喩えじゃ」
「そう言うな、血の色ってのもあながち外れでもないだろ?」
「そんなわけないじゃろ」

呆れ返って鼻で笑うように言う相手に、苦笑しながら続けた。

「白い毛に赤い瞳。典型的なアルビノ色じゃないのか?」
「アルビノじゃと?」
「なんだ、知らないのか? 先天的に色素が欠けてる生物のことだ。色素がないから虹彩が無色半透明で、眼底の血液の色が透けて見えて赤いんだよ」
「ワシがそれじゃと言いたいのか?」
「多分そうだろ? もっとも、攻撃性も俊敏性もあって、紫外線を気にせず外に平気で行く事を考えると、アルビノの動物には当てはまらないけどな」
「当たり前じゃ、ワシは人間じゃぞ」
「知ってる。今は兎にしか見えないけどな」

end
(2010/12/01)
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