逢魔ヶ刻動物園
ギュムッ、と後ろから伸びた手は無分別に白いモノを掴んだ。
「何をしてるんじゃ」
「お前を捕まえている」
そんな事も分からないのかと言い出しそうな声。
その言葉に、椎名はブチッと音を立ててキレた。
「人の耳をまとめて掴みながら言う言葉か!!」
「兎はこう捕まえるものだと思ったが?」
その後、伊佐奈が喰らったのは、怒りに任せた蹴りだった。
「何がいけなかったんだ?」
軽く吹っ飛ばされ、何処かの檻の壁にぶつかった伊佐奈は首を傾げながら呟いた。
いつまでも座り込んでいるのも、ただ体が乾くだけなので立ち上がり、また椎名を捕まえようと歩き出した。
「ええッ、丑三ッ時水族館の!?」
掃除道具を持っていた人物が叫ぶ声が耳に入り、伊佐奈はそちらを向いた。
名前は出てこないが、驚いた表情の少女に見覚えはあった。
「えっと……何しに来たんですか…?」
「兎を捕まえに来た」
おどおどと訊いてくる相手に対し、目的を言い、用は無いとばかりに歩き出そうと思ったが、ふと思いつき、歩き出すのを止めた。
「兎を捕まえるのに、耳を掴んで引き寄せるのはダメなのか?」
少女が、キョトンとした顔をしたのは一瞬。
次には驚いたように怒りながら言い返してきた。
「耳を掴むのは絶対にダメですよ!! 兎を抱き上げるには――――」
長々と続く説教のような説明のはて、結論としては、先程の捕まえ方は最もダメな方法だと言う事が分かった。
「なるほど、つまり優しく扱えば良いんだな?」
「そうです。動物は優しく扱うものです!」
良い事を聞いたとばかりに、笑顔で礼を言い、ビクッ、と怯える少女をよそに椎名のもとへと向かった。
「椎名」
「何じゃヘルメットマン」
「ようやくお前が怒っていた理由が分かった」
「さっさと水族館に帰れ」
つれない態度の椎名を無視し、先程の少女の言った言葉通りの捕まえ方を実践した。
正しい兎の捕まえ方
「あの……その頬の痣ってまさか…」
「飼育係、さっきの兎の捕まえ方は嘘だったが?」
end
(2010/10/23)
「何をしてるんじゃ」
「お前を捕まえている」
そんな事も分からないのかと言い出しそうな声。
その言葉に、椎名はブチッと音を立ててキレた。
「人の耳をまとめて掴みながら言う言葉か!!」
「兎はこう捕まえるものだと思ったが?」
その後、伊佐奈が喰らったのは、怒りに任せた蹴りだった。
「何がいけなかったんだ?」
軽く吹っ飛ばされ、何処かの檻の壁にぶつかった伊佐奈は首を傾げながら呟いた。
いつまでも座り込んでいるのも、ただ体が乾くだけなので立ち上がり、また椎名を捕まえようと歩き出した。
「ええッ、丑三ッ時水族館の!?」
掃除道具を持っていた人物が叫ぶ声が耳に入り、伊佐奈はそちらを向いた。
名前は出てこないが、驚いた表情の少女に見覚えはあった。
「えっと……何しに来たんですか…?」
「兎を捕まえに来た」
おどおどと訊いてくる相手に対し、目的を言い、用は無いとばかりに歩き出そうと思ったが、ふと思いつき、歩き出すのを止めた。
「兎を捕まえるのに、耳を掴んで引き寄せるのはダメなのか?」
少女が、キョトンとした顔をしたのは一瞬。
次には驚いたように怒りながら言い返してきた。
「耳を掴むのは絶対にダメですよ!! 兎を抱き上げるには――――」
長々と続く説教のような説明のはて、結論としては、先程の捕まえ方は最もダメな方法だと言う事が分かった。
「なるほど、つまり優しく扱えば良いんだな?」
「そうです。動物は優しく扱うものです!」
良い事を聞いたとばかりに、笑顔で礼を言い、ビクッ、と怯える少女をよそに椎名のもとへと向かった。
「椎名」
「何じゃヘルメットマン」
「ようやくお前が怒っていた理由が分かった」
「さっさと水族館に帰れ」
つれない態度の椎名を無視し、先程の少女の言った言葉通りの捕まえ方を実践した。
正しい兎の捕まえ方
「あの……その頬の痣ってまさか…」
「飼育係、さっきの兎の捕まえ方は嘘だったが?」
end
(2010/10/23)