小話

【慣れれば楽しいさ】


相手の反応を眺め、伊佐奈は仮面の下で口の端を吊り上げた。

「ああ、知らないのか」
「何が、じゃ……」

暴れようと思っても、クリック音にて抵抗できない状態の椎名は、おぼろげな思考の中で問い返した。

「だから、こういう事を」

服の下へと指を這わせ、痙攣するような反応を示す相手に、囁くように楽しげに伊佐奈は答えた。

「――ッ……」
「ほら、知らないんだろ?」
「やかましッ、早く…退かんかッ…!」

睨みつける椎名に、腹の底から可笑しそうに笑う伊佐奈は、慰めにもならない言葉を返した。

「捕らえた兎の言う事を聞く奴が、何処にいるんだ?」

end
(2010/11/08)
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