逢魔ヶ刻動物園

「少々、席を離れますがよろしいですか?」
「キャー! イルカキター!!」

対談が終わってもダラダラとショーを見ているスポンサーに(聞いているかどうかもわからないが)断りをいれ扉へと向かった。


「そのうっさん臭い笑みは嫌いじゃ」


扉を開け、廊下に出た瞬間に言われた言葉。
相手の言う嫌いな笑みを消しながら口を開いた。

「今はまだスポンサーがいる。あまりこの部屋の近くを通るな」

本当ならば、こんな事は言いたくなかった。
サカマタが、椎名が来ていると報告した時には対談は終わる兆しが見えていた。
順当に行けば、余裕をもって椎名を迎えられるはずだった。
いまだに部屋の中にいる人物がショーにさえ気を取られなければ……

「なんじゃつまらん。いつ終わるんじゃ」
「ショーが終わるまでは無理だ」
「……ワシは帰「館長室に行けばキャロットジュースを出すぞ?」

ピクリと椎名の耳が動き、不機嫌そうな顔が無くなった。

「館長室じゃな!!」

上機嫌に向かう椎名を見送りながら、通信用の受話器へと向かった。


「シャチ、今日はショーを早めに終わらせろ。それから、椎名にキャロットジュースを持っていけ。後、絶対に帰すな」
『…………でらわかりました』

受話器を置くと、ショーを見ているスポンサーの声が聞こえた。
部屋の中から聞こえてくる声に、軽く苛立ちそうになりながら、顔に笑みを貼り付けた。


「今行きます」


金ズルの分際で人の時間を削るな、とでも怒鳴りつけたい気分だった。



スポンサーは大切?
「あれ? キミ、何か不機嫌そうだね?」
「そんな事はありませんよ」


end
(2010/11/16)
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