逢魔ヶ刻動物園
「獣共! ハロウィンをするぞ!」
園長が唐突なことはいつもの事だ、と思っていたが、聞き慣れない言葉に一同首を傾げた。
ハロウィンじゃ!! と園長だけが楽しそうにはしゃいでいた。
「ハナちゃん……ハロウィンて何かしら?」
「ええっ!? ウワバミさんも知らなかったんですか!?」
「も、ってことは、園長も知らなかったの?」
華の驚きように、どうやら園長も知らなかったことを理解した。
「そうなんです……もうすぐハロウィンですねって言ったら、園長が『それは何じゃ』って訊いてきて……」
「面白い事しかやらない園長があんなにはしゃいでるって事は、面白いイベントなのかしら?」
「お化けに仮装した子供達が歩き回ってお菓子を貰いに行く行事……だったと思います、たぶん」
「それは確かに楽しそうね」
ガラガラと笑いながら、ウワバミは園長のはしゃぎ様を眺めた。
「……でも、私達って元々仮装する必要が無いような気がするけど」
「園長、何に仮装する積りなんでしょうかね……」
はしゃぐ様子は微笑ましく映るが……ウワバミの呟きに、同じく華は疑問を抱いた。
「ところで蒼井華!」
「はいっ!?」
「ワシは何に仮装できるんじゃ?」
ひとしきりはしゃいだ後の園長からの唐突な質問に、ああ、やっぱり考えてなかったんだ、と華は脱力した。
「…………兎男でいいんじゃないで「納得するわけないじゃろ」
「ハナちゃん、それは流石にないと思うわ……」
ですよね、と華は園長の分だけでも考える事になった。
「今日はハロウィンだな?」
しーん、と静まり返る会議室。
恐怖政治のごとく、誰一人として反論や意見をすることは無かった。
「イベントは書入れ時だ、ショーの失敗は許されない、その事をよく覚えておくように……とは言うまでも無いな?」
伊佐奈の言葉を一同、一言一句逃さないように聞き入った。
「各自持ち場につい……」
言葉を遮るかのような電話の呼び出し音。
不快に思いながら伊佐奈は電話口へと向かった。
「誰だ」
『なんじゃ、すぐに出れると言うことは暇なのかお前?』
「……椎名?」
意外すぎる声に、思わず聞き返すように相手の名前を呼んでしまった。
『今日はハロウィンじゃ、ワシは獣共と一緒に楽しんでるが、お前はどうせ寂しい思いをしてるじゃろ?』
どうじゃ、あってるだろと、言いたげな椎名の言葉に反論する以前に、伊佐奈は何故かけてきたのかと疑問に思うばかりだった。
『悔しかったら反論してみろ、まあできんじゃ…………ん? 巻きつけるなら早くするんじゃ、ワシはさっさと動きたい。包帯ぐらい脱兎のごとく巻け、蒼井華』
電話の向こうに雑音が入ったと思ったら、椎名が電話口ではなく別の所へと気を向けた声が聞こえ。
プツッ、と唐突に電話がきれた。
「館長?」
なかなか戻ってこない伊佐奈の様子をサカマタが見に来ると、繋がっていない電話を持つ伊佐奈が肩を震わせて立っていた。
「……サカマタ、留守を頼む」
「は?」
「逢魔ヶ刻動物園に行ってくる」
サカマタが驚く声を出す前に、伊佐奈は受話器を叩きつけるように戻し、歩き出した。
西洋風盂蘭盆
「園長動かないでくださいよ!! それと、何処にかけてたんですか?」
「丑三ッ時水族館の伊佐奈にじゃ、今頃悔しがってるじゃろうな」
「ええっ!? あの水族館の館長が来ますよ!?」
「……何でじゃ?」
end
(2010/10/31)
園長が唐突なことはいつもの事だ、と思っていたが、聞き慣れない言葉に一同首を傾げた。
ハロウィンじゃ!! と園長だけが楽しそうにはしゃいでいた。
「ハナちゃん……ハロウィンて何かしら?」
「ええっ!? ウワバミさんも知らなかったんですか!?」
「も、ってことは、園長も知らなかったの?」
華の驚きように、どうやら園長も知らなかったことを理解した。
「そうなんです……もうすぐハロウィンですねって言ったら、園長が『それは何じゃ』って訊いてきて……」
「面白い事しかやらない園長があんなにはしゃいでるって事は、面白いイベントなのかしら?」
「お化けに仮装した子供達が歩き回ってお菓子を貰いに行く行事……だったと思います、たぶん」
「それは確かに楽しそうね」
ガラガラと笑いながら、ウワバミは園長のはしゃぎ様を眺めた。
「……でも、私達って元々仮装する必要が無いような気がするけど」
「園長、何に仮装する積りなんでしょうかね……」
はしゃぐ様子は微笑ましく映るが……ウワバミの呟きに、同じく華は疑問を抱いた。
「ところで蒼井華!」
「はいっ!?」
「ワシは何に仮装できるんじゃ?」
ひとしきりはしゃいだ後の園長からの唐突な質問に、ああ、やっぱり考えてなかったんだ、と華は脱力した。
「…………兎男でいいんじゃないで「納得するわけないじゃろ」
「ハナちゃん、それは流石にないと思うわ……」
ですよね、と華は園長の分だけでも考える事になった。
「今日はハロウィンだな?」
しーん、と静まり返る会議室。
恐怖政治のごとく、誰一人として反論や意見をすることは無かった。
「イベントは書入れ時だ、ショーの失敗は許されない、その事をよく覚えておくように……とは言うまでも無いな?」
伊佐奈の言葉を一同、一言一句逃さないように聞き入った。
「各自持ち場につい……」
言葉を遮るかのような電話の呼び出し音。
不快に思いながら伊佐奈は電話口へと向かった。
「誰だ」
『なんじゃ、すぐに出れると言うことは暇なのかお前?』
「……椎名?」
意外すぎる声に、思わず聞き返すように相手の名前を呼んでしまった。
『今日はハロウィンじゃ、ワシは獣共と一緒に楽しんでるが、お前はどうせ寂しい思いをしてるじゃろ?』
どうじゃ、あってるだろと、言いたげな椎名の言葉に反論する以前に、伊佐奈は何故かけてきたのかと疑問に思うばかりだった。
『悔しかったら反論してみろ、まあできんじゃ…………ん? 巻きつけるなら早くするんじゃ、ワシはさっさと動きたい。包帯ぐらい脱兎のごとく巻け、蒼井華』
電話の向こうに雑音が入ったと思ったら、椎名が電話口ではなく別の所へと気を向けた声が聞こえ。
プツッ、と唐突に電話がきれた。
「館長?」
なかなか戻ってこない伊佐奈の様子をサカマタが見に来ると、繋がっていない電話を持つ伊佐奈が肩を震わせて立っていた。
「……サカマタ、留守を頼む」
「は?」
「逢魔ヶ刻動物園に行ってくる」
サカマタが驚く声を出す前に、伊佐奈は受話器を叩きつけるように戻し、歩き出した。
西洋風盂蘭盆
「園長動かないでくださいよ!! それと、何処にかけてたんですか?」
「丑三ッ時水族館の伊佐奈にじゃ、今頃悔しがってるじゃろうな」
「ええっ!? あの水族館の館長が来ますよ!?」
「……何でじゃ?」
end
(2010/10/31)