桔ザク

後ろ髪を引かれた桔梗は、振り返りながら口を開いた。

「ハハン、痛いですよザクロ」
「当たり前だバーロー。痛くしてんだよ」

文字通り後ろ髪を引かれている中、ため息をついてザクロの近くへと腰を下ろした。

「何か、貴方の気に触る事を私はしましたか?」
「したと思ってんのか」

睨みあげるザクロに、桔梗はゆるりと目を細めた。

「したようですね?」
「とぼけるなバーロォ」

絹糸のような桔梗の髪を掴みながら、ザクロは不機嫌に言い放った。
苛立っているザクロに、少し困ったような顔をしてから、桔梗はもう一度質問した。

「何を、そんなに怒っているのですか?」

薄っすらと笑みを浮かべ、そっとザクロの手から自分の髪を外させた桔梗は、歌うように囁いた。

「絶倫野郎」
「心外ですね、手加減はしましたよ?」
「どの口が言ってんだ? お前のせいで、一日中ベッドですごす羽目になっただろ」
「ハハン、たかが一日程度のことではありませんか」

可笑しそうに言い返す桔梗に、何故こうまで差があるのかとザクロはさらに桔梗を睨んだ。

「お前が受身になれ」
「お断りします。一度覚えてしまった貴方の艶態を見られなくなるのは嫌ですから」
「お前はエゴイストかよ」
「ハハンッ、随分と酷い言い様ですね」

その口を黙らせましょうか、と問いかける桔梗に、口を噤んだザクロは舌打ちをした。

「俺は性欲処理道具かバーロー」

ポソリと呟く様に、桔梗はクスリと笑ってからその口を黙らせた。

「道具として扱うのならば、ご機嫌伺いをすると思いますか?」
「だったら始めから、めんどくせー事やんな」
「それは、男のさがですから諦めてください」



開き直るな
「……身も蓋もねー言い方だな」


end
(2010/08/09)
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