桔ザク

「随分と不機嫌そうなツラだなバーロー」
「ハハン、そうですか」

眉を寄せている桔梗を見ながら、ザクロは上機嫌に笑った。

「で、御綺麗な桔梗様は、また男に告白されたのか?」
「言わないで頂けますか、思い出したくも無いので」
「難儀なもんだな、女顔ってのも」

あからさまに、からかう様に言うザクロ。
その対応に少なからず桔梗は苛立った。
男に告白されただけでも気分は急降下していると言うのに、輪をかけてザクロが面白がるのが気に障った。

「楽しいですか? 私をからかうのは」
「暇つぶしには持ってこいだなバーロー」
「貴方のせいで、私はとても不快なのですが?」

冷笑しながら軽く桔梗が睨みつけると、ザクロは鼻で笑った。

「見目麗し過ぎる女顔の桔梗様がいけねーんじゃねぇか?」
「ハハン、丁寧語を使うなら敬意をはらいなさい。馬鹿にされているとしか思えませんよ」
「馬鹿にしてんだから当たり前だろバーロォ」

危うくザクロを雲桔梗の餌食にしそうだったが、何とか感情を抑え桔梗は婉然と微笑んだ。

「そんなに、私が他人に構ったのが気に障りましたか?」
「ああ?」
「言っていただければ、貴方がつまらない嫉妬をするのが馬鹿馬鹿しくなるほどに構いましたよ?」
「自意識過剰も大概にしろ、誰がんなもんで嫉妬するかよ」

皮肉で切り返してきやがったかと顔を顰めたザクロは、先程までの優位が嘘のように劣勢に立たされた。

「むきになって意地をはらなくてもいいのですよ? 貴方がすぐに嫉妬することは分かっていますから」
「バーロォ、誰がッ!」

余裕の表情で言い切る桔梗に腹の立ったザクロは、立ち上がり手を出した。

「ハハン、口喧嘩で私に敵うと思いましたか?」

予測されていたように軽く掴まれた拳。
満足げに言い放つ桔梗に、ザクロは自分の短気を呪った。



形勢逆転
始めからできるはずもなく……


end
(2010/07/27)
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