桔ザク
「だりぃ~、あちー」
クーラーからの風が一番当たる所を陣取っているザクロは、それでもなお涼しくならずにいた。
「ニュ~、あつーいー」
「ぐえっ……」
ザクロの上に飛び乗ったブルーベルは汗を流しながらだらけた。
「何しやがんだバーロー」
「あーつーいーのー」
ザクロの背中に乗りバタバタと暴れながら訴えるブルーベル。
その訴えに頭を上げながら呆れた。
「暑いなら引っ付くな」
「だって此処が一番クーラーの風が当たるんだもん」
ふにゃ~っととろける様にザクロの上で大の字になりながらブルーベルは平然と返した。
上に乗られた事により、接着面がじわりと熱くなり顔を顰めるザクロの事はお構い無しだった。
「バーロー、俺が先にとった場所だ」
「ふ~ん、じゃあブルーベルが来たからさっさと退けば?」
「お前が退け!」
「なによ! レディーに対して優しくするものよ!」
「ああ? 何処にレディーがいるってんだぁ?」
「ニュー! ムカつくー!!」
「ハハン、うるさいですよ」
ピッと小さな音を立ててクーラーは停止した。
「なっ!?」
「ニュニュ?!」
冷たい風を送り出す事を止めたクーラーを見上げ、驚愕の表情を浮かべるザクロとブルーベル。
次に、クーラーを停止させた桔梗をギッと睨んだ。
「何しやがんだバーロォ!」
「そうよ! ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
「取り合いになるのでしたら、始めからない方がましなのでは? それから、言い争いは聞いているだけで暑苦しいですから」
涼しげな表情でサラサラと陳べる桔梗。
怒りに体を震わせたザクロとブルーベルは、立ち上がり詰め寄った。
「もとはと言えば、ブルーベルが悪いんだろ! さっさと起動させろ!」
「ニュッ!? ザクロが1人で涼しい場所独占するのがいけないんでしょ!!」
互いに指を指しあい非難しあう二人。
その様子に、桔梗は呆れながら小さくため息をついた。
「ハハン……言い争いを止めて頂けますか?」
「うっ……」
「ニュッ」
笑みを湛えながら、冷たい空気を纏わりつかせる桔梗には、有無を言わせないものがあった。
「ようやく、静かになりましたね。あまり手間を掛けさせないでください」
「バーロォ! リモコン何処に持ってく気だ!?」
「ザクロ、言ったはずですよ? 取り合いになるのならば、始めからない方がましなのでは、と」
「…………」
「ハハン、夕刻まで静かにしていれば返しますよ」
「ニュ~、それって夕方にはもう涼しくなってると思うけ、ど……」
口元を尖らせながら小さな声でブルーベルは呟いていたが、桔梗の笑みに口を噤んだ。
「何か、言いましたか? ブルーベル」
「なっ、何でもないわ桔梗!!」
優しく響く桔梗の声に、ブンブンと首を振りながらブルーベルは大声で言った。
「では、くれぐれも静かにしていてくださいね?」
暑ささえも忘れる絶対零度の声に、無言で首を縦に振るザクロとブルーベルだった。
その様子に、極上の笑みを浮かべた桔梗は、リモコンを持ったまま部屋を出て行った。
「ニュ~怖かった」
「別の意味で体が冷えやがった……」
桔梗が出て行った後、座り込んだ二人は冷や汗が止まらなかった。
「でも、なんであんなに不機嫌だったのかしら?」
「そりゃあれだろ、暑いのが嫌いだからだろ」
「汗一つかいてないのに?」
「バーロー、ありゃやせ我慢だ、寝る時なんかクーラーガンガンに利かせて寝てるタイプだぜ?」
「ニュ~、自分の部屋でクーラー利かせてればいいのに」
プーっと頬を膨らませ不機嫌そうに言うブルーベル。
ぽりぽりと頬を掻きながら、ザクロはポソリと呟いた。
「あいつの部屋のクーラー壊れてるからなぁ……つーか、俺が壊した」
「………………何で壊しちゃうのよ!!」
ザクロの頭を思いっきり殴ったブルーベルは、顔を怒りで赤くしながら威嚇した。
「バーロォ! 仕方ねーだろ、あいつの部屋が寒すぎんだよ!」
「それとクーラー壊したのと何の関係があるの!?」
「あいつの部屋で寝てみろ! 寒すぎて夏に凍死するぞ!? シャレになんねーだろ!!」
「それぐらい我慢しなさいよ! ……ニュ? 何でザクロが桔梗の部屋で寝る必要があるのよ?」
眉を寄せながら首を傾げるブルーベルに、口を噤んだザクロは目を泳がせた。
不可抗力
「……忘れろバーロー」
「納得の出来る説明しなさいよ!!」
end
(2010/07/18)
クーラーからの風が一番当たる所を陣取っているザクロは、それでもなお涼しくならずにいた。
「ニュ~、あつーいー」
「ぐえっ……」
ザクロの上に飛び乗ったブルーベルは汗を流しながらだらけた。
「何しやがんだバーロー」
「あーつーいーのー」
ザクロの背中に乗りバタバタと暴れながら訴えるブルーベル。
その訴えに頭を上げながら呆れた。
「暑いなら引っ付くな」
「だって此処が一番クーラーの風が当たるんだもん」
ふにゃ~っととろける様にザクロの上で大の字になりながらブルーベルは平然と返した。
上に乗られた事により、接着面がじわりと熱くなり顔を顰めるザクロの事はお構い無しだった。
「バーロー、俺が先にとった場所だ」
「ふ~ん、じゃあブルーベルが来たからさっさと退けば?」
「お前が退け!」
「なによ! レディーに対して優しくするものよ!」
「ああ? 何処にレディーがいるってんだぁ?」
「ニュー! ムカつくー!!」
「ハハン、うるさいですよ」
ピッと小さな音を立ててクーラーは停止した。
「なっ!?」
「ニュニュ?!」
冷たい風を送り出す事を止めたクーラーを見上げ、驚愕の表情を浮かべるザクロとブルーベル。
次に、クーラーを停止させた桔梗をギッと睨んだ。
「何しやがんだバーロォ!」
「そうよ! ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
「取り合いになるのでしたら、始めからない方がましなのでは? それから、言い争いは聞いているだけで暑苦しいですから」
涼しげな表情でサラサラと陳べる桔梗。
怒りに体を震わせたザクロとブルーベルは、立ち上がり詰め寄った。
「もとはと言えば、ブルーベルが悪いんだろ! さっさと起動させろ!」
「ニュッ!? ザクロが1人で涼しい場所独占するのがいけないんでしょ!!」
互いに指を指しあい非難しあう二人。
その様子に、桔梗は呆れながら小さくため息をついた。
「ハハン……言い争いを止めて頂けますか?」
「うっ……」
「ニュッ」
笑みを湛えながら、冷たい空気を纏わりつかせる桔梗には、有無を言わせないものがあった。
「ようやく、静かになりましたね。あまり手間を掛けさせないでください」
「バーロォ! リモコン何処に持ってく気だ!?」
「ザクロ、言ったはずですよ? 取り合いになるのならば、始めからない方がましなのでは、と」
「…………」
「ハハン、夕刻まで静かにしていれば返しますよ」
「ニュ~、それって夕方にはもう涼しくなってると思うけ、ど……」
口元を尖らせながら小さな声でブルーベルは呟いていたが、桔梗の笑みに口を噤んだ。
「何か、言いましたか? ブルーベル」
「なっ、何でもないわ桔梗!!」
優しく響く桔梗の声に、ブンブンと首を振りながらブルーベルは大声で言った。
「では、くれぐれも静かにしていてくださいね?」
暑ささえも忘れる絶対零度の声に、無言で首を縦に振るザクロとブルーベルだった。
その様子に、極上の笑みを浮かべた桔梗は、リモコンを持ったまま部屋を出て行った。
「ニュ~怖かった」
「別の意味で体が冷えやがった……」
桔梗が出て行った後、座り込んだ二人は冷や汗が止まらなかった。
「でも、なんであんなに不機嫌だったのかしら?」
「そりゃあれだろ、暑いのが嫌いだからだろ」
「汗一つかいてないのに?」
「バーロー、ありゃやせ我慢だ、寝る時なんかクーラーガンガンに利かせて寝てるタイプだぜ?」
「ニュ~、自分の部屋でクーラー利かせてればいいのに」
プーっと頬を膨らませ不機嫌そうに言うブルーベル。
ぽりぽりと頬を掻きながら、ザクロはポソリと呟いた。
「あいつの部屋のクーラー壊れてるからなぁ……つーか、俺が壊した」
「………………何で壊しちゃうのよ!!」
ザクロの頭を思いっきり殴ったブルーベルは、顔を怒りで赤くしながら威嚇した。
「バーロォ! 仕方ねーだろ、あいつの部屋が寒すぎんだよ!」
「それとクーラー壊したのと何の関係があるの!?」
「あいつの部屋で寝てみろ! 寒すぎて夏に凍死するぞ!? シャレになんねーだろ!!」
「それぐらい我慢しなさいよ! ……ニュ? 何でザクロが桔梗の部屋で寝る必要があるのよ?」
眉を寄せながら首を傾げるブルーベルに、口を噤んだザクロは目を泳がせた。
不可抗力
「……忘れろバーロー」
「納得の出来る説明しなさいよ!!」
end
(2010/07/18)