桔ザク

竹に短冊、色取り取りの折り紙で作られた飾り。

「ようやく一段落かバーロー?」
「ハハン、そうですね。一時はどうなるかと思いましたが」

遠い目をする桔梗は、一日がかりで飾りつけた竹を眺めた。
同じように今日の事を振り返り、ザクロは同意した。

「クリスマスの飾りじゃいけねーなんて知らなかったぜ」
「堂々とクリスマス用の飾りを出した貴方に、呆れを通り越して感心すらしましたよ」
「似たようなもんだろ」
「自信満々に飾りならあると言い切った貴方を信じた私が間違っていました」
「細かい事を一々蒸し返すなバーロー」
「ハハン、七夕にクリスマスの飾りでは、モミの木の代わりに松を使うほどの暴挙ですよ?」

ブルーベルとデイジーが花火をしているのを眺めながら、とにかく大変だったと締めくくった。

「やあ、楽しんでるみたいだね?」
「ハハン、白蘭様、お越しになっていたのですか」

唐突な訪問にも動じず、桔梗は白蘭へと振り返りながらこたえた。

「僕も短冊を飾ろうかなって思って」

ドスン、と置かれた紙袋。
その中には大量の短冊が入っていた。

「白蘭様、その紙屑の山は何でしょうか?」
「何って、冗談きついよ桔梗チャン、短冊だよ? 桔梗チャンとザクロ君も吊るすの手伝ってね?」

ニコニコしながら何も飾られていない竹を持って来た白蘭は、早々に竹を立てて短冊を鼻歌交じりに飾り始めた。

「『正チャンと結婚したい』、『正チャンが僕に笑いかけてくれますように』、『正チャンが……」

三つ目の願いを読み上げていた桔梗は途中で口を噤んだ。
一様に同じ内容の短冊の山に、吊るしすぎて竹はしなり始めていた。
その様子を眺めた桔梗は、微笑を浮かべてザクロへと振り返った。

「ハハン、ザクロ、灰に変えてください」
「まかせろバーロー」
「僕の短冊がァアア!?」

無慈悲な嵐属性の炎により、あと少しで重みに耐え切れず折れそうな竹は灰へと変わった。

「酷いよ桔梗チャン!」
「子供には、この世の害を見せないのが大人の務めです」
「おい桔梗、向こうにも、あと一山短冊があるみてーだぜ?」
「ハハン、それも灰へと変えてください」
「酷すぎるよ二人とも!!」

白蘭の抗議を聞かず、ザクロは有害な願いが書かれた短冊を灰へと変えまくった。

「……せっかく渾身の祈りを込めて書いたのに」
「ハハン、灰へと変わり、天へと昇ったのだとお考えください」
「それ、跡形も無くなったらお願い事も読めないよね?」



かなう、かなわない?
「桔梗、前々から思ってたけどよぉ、お前白蘭様に対して冷たくねーか?」
「ハハン、くだらない事で貴方との時間を削る者に容赦するほど、私は人格者ではありません」


end
(2010/07/07)
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