桔ザク
「桔梗チャン、何作ってるの?」
「ハハン、杏仁豆腐ですが?」
「……僕の気のせいかな。桔梗チャンが持ってるのビワの種に見える」
「その通りですよ?」
ビワ種の茶色い部分を剥きながら、白蘭が何故引き気味に聞くか分からない桔梗は作業を続けた。
「桔梗チャン、ちゃんとした杏仁買ってあげるから、貧乏くさい事は止めようよ」
「何を言っているのですか白蘭様。ビワも杏も同じバラ科ですよ」
真面目に返す桔梗に、ああ、少し来なかっただけで世間ズレしちゃってると。
白蘭は真6弔花のもとへ最近行かなかった自分を責めた。
ビワ種を剥き終わった桔梗が、水と一緒にビワ種をミキサーにかけているのを哀れむように見た白蘭は。
桔梗を止められる人物のもとへ足を向けた。
「ザクロ君、桔梗チャン止めて」
「はぁ……? 桔梗が何かしたんですか?」
「何かかわいそうになってる……ビワの種で杏仁豆腐作るとか言ってるんだ」
「今日は杏仁豆腐ですか」
「……ザクロ君、もう少し驚く所だから此処」
サラリと流したザクロに、此処にも一人世間ズレしちゃった子が出来てたと白蘭は泣きたくなった。
「ニュ! びゃくらんだ、珍しー!!」
「ブルーベル……桔梗チャンとザクロ君がおかしくなっちゃった」
「ニュニュ?」
パタパタと走りよってきたブルーベルの肩に両手を置きながら、白蘭は涙ぐみながらつげた。
「杏仁豆腐をビワ種で作るって言ってるんだ」
「ニュ! 今日は杏仁豆腐なの!?」
今日のおやつ内容を聞いて喜ぶブルーベルに、あれっと白蘭は目を瞬かせた。
「えーっと……ビワ種で作ってるんだよ?」
「びゃくらん知らないの? 杏仁豆腐はビワ種で作るのよ!」
「ちがうからね」
間違った知識がはびこっている中、一から教え直した方が良いのかと白蘭は考えた。
得意げに白蘭へと言ったブルーベルに、呆れながらザクロは笑った。
「バーロー、杏仁豆腐ってのは杏子の種子を主材料にしてんだろ」
「ニュッ! だって前桔梗がビワ種で作ってたもん!」
「代用品つー言葉知ってんのか?」
「ニュニュ~ッ、ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
ブルーベルの間違えを正すザクロに、白蘭は首を傾げた。
「え、ザクロ君、杏仁豆腐の原料知ってたの?」
「知ってますが?」
じゃあ何で、といった顔でさらに白蘭が問おうとすると、部屋に入ってきた桔梗が不思議そうに白蘭へと話しかけた。
「ハハン、まだいらしたのですか? 白蘭様」
「……桔梗チャン、邪魔者みたいに言わないで」
「あいにくと白蘭様の分が無いものですから」
トレーに乗せた杏仁豆腐を席に着いているザクロとブルーベルの前に置きながら、桔梗は主たる白蘭をないがしろに扱った。
「ニュ~! おいしー!」
上機嫌でビワ種から作られた杏仁豆腐をほおばるブルーベル。
その様子を横目に見た白蘭は、ゴクリと別の意味で唾を飲み込み、恐る恐る普通に食べているザクロへと聞いた。
「……ザクロ君、ソレ、美味しい?」
「うまいですよ。白蘭様も食べますか?」
白い、見た目だけならば普通の杏仁豆腐に見えるソレをスプーンに乗せ差し出すザクロ。
白蘭は目の前に出されたソレに、いつもの余裕の表情はできず、真剣に対峙した。
「ハハン、ザクロ、止めなさい」
「ああ? 何でだバーロー」
「食べかけを差し上げるのは失礼に当たりますから」
「そーかよ」
向けていたスプーンを自分の口へと運び、また杏仁豆腐を食べ始めるザクロ。
白蘭とザクロの間接キスを防げた事に満足した桔梗は、まだ疑いの目を向ける白蘭をサラリと無視した。
「びゃくらんも食べる?」
「えっ……僕はいいよブルーベル」
「だってさっきからず~っと見てるんだから、一口ぐらいブルーベルがあげるわ!」
無邪気に差し出すブルーベルに、食べなきゃいけないよね、と意を決して白蘭はビワ種から作られた杏仁豆腐を口へと運んだ。
「……あれ? 杏仁豆腐の味だ」
杏仁豆腐の理屈
同じバラ科の種子だから?
end
(2010/06/21)
「ハハン、杏仁豆腐ですが?」
「……僕の気のせいかな。桔梗チャンが持ってるのビワの種に見える」
「その通りですよ?」
ビワ種の茶色い部分を剥きながら、白蘭が何故引き気味に聞くか分からない桔梗は作業を続けた。
「桔梗チャン、ちゃんとした杏仁買ってあげるから、貧乏くさい事は止めようよ」
「何を言っているのですか白蘭様。ビワも杏も同じバラ科ですよ」
真面目に返す桔梗に、ああ、少し来なかっただけで世間ズレしちゃってると。
白蘭は真6弔花のもとへ最近行かなかった自分を責めた。
ビワ種を剥き終わった桔梗が、水と一緒にビワ種をミキサーにかけているのを哀れむように見た白蘭は。
桔梗を止められる人物のもとへ足を向けた。
「ザクロ君、桔梗チャン止めて」
「はぁ……? 桔梗が何かしたんですか?」
「何かかわいそうになってる……ビワの種で杏仁豆腐作るとか言ってるんだ」
「今日は杏仁豆腐ですか」
「……ザクロ君、もう少し驚く所だから此処」
サラリと流したザクロに、此処にも一人世間ズレしちゃった子が出来てたと白蘭は泣きたくなった。
「ニュ! びゃくらんだ、珍しー!!」
「ブルーベル……桔梗チャンとザクロ君がおかしくなっちゃった」
「ニュニュ?」
パタパタと走りよってきたブルーベルの肩に両手を置きながら、白蘭は涙ぐみながらつげた。
「杏仁豆腐をビワ種で作るって言ってるんだ」
「ニュ! 今日は杏仁豆腐なの!?」
今日のおやつ内容を聞いて喜ぶブルーベルに、あれっと白蘭は目を瞬かせた。
「えーっと……ビワ種で作ってるんだよ?」
「びゃくらん知らないの? 杏仁豆腐はビワ種で作るのよ!」
「ちがうからね」
間違った知識がはびこっている中、一から教え直した方が良いのかと白蘭は考えた。
得意げに白蘭へと言ったブルーベルに、呆れながらザクロは笑った。
「バーロー、杏仁豆腐ってのは杏子の種子を主材料にしてんだろ」
「ニュッ! だって前桔梗がビワ種で作ってたもん!」
「代用品つー言葉知ってんのか?」
「ニュニュ~ッ、ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
ブルーベルの間違えを正すザクロに、白蘭は首を傾げた。
「え、ザクロ君、杏仁豆腐の原料知ってたの?」
「知ってますが?」
じゃあ何で、といった顔でさらに白蘭が問おうとすると、部屋に入ってきた桔梗が不思議そうに白蘭へと話しかけた。
「ハハン、まだいらしたのですか? 白蘭様」
「……桔梗チャン、邪魔者みたいに言わないで」
「あいにくと白蘭様の分が無いものですから」
トレーに乗せた杏仁豆腐を席に着いているザクロとブルーベルの前に置きながら、桔梗は主たる白蘭をないがしろに扱った。
「ニュ~! おいしー!」
上機嫌でビワ種から作られた杏仁豆腐をほおばるブルーベル。
その様子を横目に見た白蘭は、ゴクリと別の意味で唾を飲み込み、恐る恐る普通に食べているザクロへと聞いた。
「……ザクロ君、ソレ、美味しい?」
「うまいですよ。白蘭様も食べますか?」
白い、見た目だけならば普通の杏仁豆腐に見えるソレをスプーンに乗せ差し出すザクロ。
白蘭は目の前に出されたソレに、いつもの余裕の表情はできず、真剣に対峙した。
「ハハン、ザクロ、止めなさい」
「ああ? 何でだバーロー」
「食べかけを差し上げるのは失礼に当たりますから」
「そーかよ」
向けていたスプーンを自分の口へと運び、また杏仁豆腐を食べ始めるザクロ。
白蘭とザクロの間接キスを防げた事に満足した桔梗は、まだ疑いの目を向ける白蘭をサラリと無視した。
「びゃくらんも食べる?」
「えっ……僕はいいよブルーベル」
「だってさっきからず~っと見てるんだから、一口ぐらいブルーベルがあげるわ!」
無邪気に差し出すブルーベルに、食べなきゃいけないよね、と意を決して白蘭はビワ種から作られた杏仁豆腐を口へと運んだ。
「……あれ? 杏仁豆腐の味だ」
杏仁豆腐の理屈
同じバラ科の種子だから?
end
(2010/06/21)