桔ザク

隣を見ると、軽く癖の入った淡いエメラルドグリーンの……

「…………夢だなバーロー」

起き上がっていた体を布団の中に潜り込ませ、目を閉じた。

『早く起こしに来い桔梗、たぶんうなされてんだろ、笑って見てねーで起こせドS野郎……て、隣で寝てるから無理な話かバーロー?』

ガッと布団を払いのけ、起き上がりもう一度隣を見ると、寸分たがわず桔梗がいた。

「夢じゃねーな……」

頬をつねっても痛みしかなかった。
どう目を凝らしても隣にはスヤスヤと眠る桔梗がいる。

「服……は、着てんなバーロー」

誤って一夜を共にした(体の繋がり込みの方)は無いらしい。
が、しかし……

「……人を抱き枕代わりにしてんじゃねーぞバーロー」

腰に回されている桔梗の腕は問題だった。
かなりきわどい所へと伸びる手に、外そうと思ったが、意外としっかり固定されていた。

「女と勘違いしてんのか?」

どんな状況だったらこんな事になるのか疑問に思うが、昨日の事が思い出せない。
まさか人肌恋しいなどと言う理由で大の大人二人が一緒に寝ましたなんてものは無いだろう。
どうせ、こいつが部屋を間違えたんだろ。
一通り考え終わり、とりあえず桔梗を起こすことにした。

「起きろ桔梗」

スヤスヤと寝息を立てている桔梗の頭を軽く殴った。
多少乱暴なことは認めるが、人の体に抱きついて寝てる奴を優しく起こそうと言う考えは毛頭無かった。

「……なんですか、ザクロ?」
「とりあえず手を外せバーロー」

ぼーっとした目で見上げてくる桔梗に言葉を投げかけると、何を考えたのかニッコリと笑いかけてきた。

「ハハン……夢の中でも会えるとは思いませんでしたよ」
「ああ?」

抱きついていた手を一旦離し、ゆっくりと起き上がった桔梗は、覆いかぶさるように迫って来た。

「おいッ!? 寝ぼけんなバーロー!!」

顔に手を添えてきた桔梗に、思考回路がまともでない奴にどう対応すれば良いのかと焦った。

「ザクロ……私は貴方の事が……」

段々と小さくなっていく声、顔を近づけてきた桔梗は、そのまま倒れこむように寝た。

「何だったんだバーロー……」

また、人を枕代わりにしている桔梗を見下ろしながら、自分ももう一度寝なおそうかと思った。



夢であることを夢見て
現実逃避しても結果は同じ


end
(2010/04/25)
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