桔ザク
翁の面を被ったように見える人物が、ブツブツと言っている内容を聞き、ザクロは喉の奥で笑った。
その声にハッとした様に顔を上げた相手は、忌々しげに声を出してきた。
「ザクロ……様」
「よぉ、猿……いや幻騎士、随分と不満そうだなぁ?」
もし、仮面がなければ苦虫を噛み潰したような顔をしているだろう幻騎士に、ザクロは口元を吊り上げながら聞いた。
「負け犬が真6弔花にケンカ売る気か?」
「だまれ」
「ああ? 敬語はどうしたバーロー、口調が戻ってるぜ?」
無言だが舌打ちでも聞こえてきそうな様子に、さらに言葉を吐き捨てるように投げかけた。
「そんなにガキに負けたのが気にくわねぇのか? 卑屈さに磨きがかかりやがってよぉ、ミルフィオーレ随一の剣士も落ちぶれたな」
「黙れと言っている!」
「……言葉遣いに気をつけたほうがいいぜバーロー?」
今度こそ舌打ちが聞こえ、幻騎士は霧のように消え、気配が遠のいていった。
「ハッ、おめでてぇ奴だな……」
一人残された部屋で嘲笑したザクロだったが、微かに漂う香りに顔をしかめた。
「随分と、幻騎士に構っているようですね?」
どこから聞いた情報なのか、桔梗は椅子にもたれ掛かり目を閉じていたザクロを見ながら聞いた。
「……桔梗か」
目を開け桔梗を見上げたザクロは一言だけ呟き、また目を閉じようとした。
「珍しいですね、貴方が構うとは」
「うるせぇバーロー」
なおも聞いてくる桔梗を不機嫌そうに睨みつけた。
そんなザクロに苦笑した桔梗は近くへとより、さらに問いかけた。
「貴方から積極的に関わりながら、それですか?」
「イラつくだけだ」
「それが珍しいと言っているんです」
話を終わらせようとしない桔梗に舌打ちをしたザクロは、忌々しげに顔をしかめながら口を開いた。
「テメェの香りがアイツからすんのがイラつくだけだ」
ザクロの言葉に軽く目を見開いた桔梗は、ふと原因に気がつきクスリと笑った。
「雲桔梗……ですか」
「アイツの鎧に仕込んだのは知ってるぜバーロー。だけどなぁ、一々お前の香りがアイツからすんのがうっとおしい」
「ハハン、香りがするのは当たり前と言えば当たり前の事ですね」
クスクスと笑う桔梗に、鋭い目で睨んだ。
「お前は俺のだろバーロォ」
「そして、貴方は私のものですね」
可愛らしい嫉妬もあったものですね、と桔梗が呟くと、さらに不機嫌になったザクロは外方を向いた。
「ハハンッ、鼻が利くのも困りものですね……ですが、あれはその内いなくなりますよ?」
「それまで耐えろってのか?」
「たかが移り香にも満たないものですよ、気にしすぎでは? ですが、気になるようでしたら貴方に私の香りをつけましょうか? そうすれば、移り香にも満たないものを気にすることもないでしょう」
「バーロー、俺はお前の香りがアイツからすんのが気にくわねぇ、つってんだろ」
イラつきながらも自分以外の人物を考えているザクロに、桔梗は僅かに眉を寄せた。
「……ザクロ、あまり私の前で他人を気にかけるのをやめていただけますか? それがたとえ私がらみでも、気分の良いものではありませんので」
顔を上げさせ、瞳を見据えながら言う桔梗に、睨み返しながらザクロは嗤笑した。
「お前が蒔いた種だろ」
まいた花が咲くまで
不快さは続く
end
(2010/04/19)
その声にハッとした様に顔を上げた相手は、忌々しげに声を出してきた。
「ザクロ……様」
「よぉ、猿……いや幻騎士、随分と不満そうだなぁ?」
もし、仮面がなければ苦虫を噛み潰したような顔をしているだろう幻騎士に、ザクロは口元を吊り上げながら聞いた。
「負け犬が真6弔花にケンカ売る気か?」
「だまれ」
「ああ? 敬語はどうしたバーロー、口調が戻ってるぜ?」
無言だが舌打ちでも聞こえてきそうな様子に、さらに言葉を吐き捨てるように投げかけた。
「そんなにガキに負けたのが気にくわねぇのか? 卑屈さに磨きがかかりやがってよぉ、ミルフィオーレ随一の剣士も落ちぶれたな」
「黙れと言っている!」
「……言葉遣いに気をつけたほうがいいぜバーロー?」
今度こそ舌打ちが聞こえ、幻騎士は霧のように消え、気配が遠のいていった。
「ハッ、おめでてぇ奴だな……」
一人残された部屋で嘲笑したザクロだったが、微かに漂う香りに顔をしかめた。
「随分と、幻騎士に構っているようですね?」
どこから聞いた情報なのか、桔梗は椅子にもたれ掛かり目を閉じていたザクロを見ながら聞いた。
「……桔梗か」
目を開け桔梗を見上げたザクロは一言だけ呟き、また目を閉じようとした。
「珍しいですね、貴方が構うとは」
「うるせぇバーロー」
なおも聞いてくる桔梗を不機嫌そうに睨みつけた。
そんなザクロに苦笑した桔梗は近くへとより、さらに問いかけた。
「貴方から積極的に関わりながら、それですか?」
「イラつくだけだ」
「それが珍しいと言っているんです」
話を終わらせようとしない桔梗に舌打ちをしたザクロは、忌々しげに顔をしかめながら口を開いた。
「テメェの香りがアイツからすんのがイラつくだけだ」
ザクロの言葉に軽く目を見開いた桔梗は、ふと原因に気がつきクスリと笑った。
「雲桔梗……ですか」
「アイツの鎧に仕込んだのは知ってるぜバーロー。だけどなぁ、一々お前の香りがアイツからすんのがうっとおしい」
「ハハン、香りがするのは当たり前と言えば当たり前の事ですね」
クスクスと笑う桔梗に、鋭い目で睨んだ。
「お前は俺のだろバーロォ」
「そして、貴方は私のものですね」
可愛らしい嫉妬もあったものですね、と桔梗が呟くと、さらに不機嫌になったザクロは外方を向いた。
「ハハンッ、鼻が利くのも困りものですね……ですが、あれはその内いなくなりますよ?」
「それまで耐えろってのか?」
「たかが移り香にも満たないものですよ、気にしすぎでは? ですが、気になるようでしたら貴方に私の香りをつけましょうか? そうすれば、移り香にも満たないものを気にすることもないでしょう」
「バーロー、俺はお前の香りがアイツからすんのが気にくわねぇ、つってんだろ」
イラつきながらも自分以外の人物を考えているザクロに、桔梗は僅かに眉を寄せた。
「……ザクロ、あまり私の前で他人を気にかけるのをやめていただけますか? それがたとえ私がらみでも、気分の良いものではありませんので」
顔を上げさせ、瞳を見据えながら言う桔梗に、睨み返しながらザクロは嗤笑した。
「お前が蒔いた種だろ」
まいた花が咲くまで
不快さは続く
end
(2010/04/19)