桔ザク

「自尊心と言うものが貴方にはないのですか?」

きれいな顔を歪め、不快そうに桔梗が聞いてきた。
その言葉に、けだるげに相手を見上げた。

「なかったらなんだバーロー? そう言いながらお前も十分楽しんだだろ?」
「貴方が部下にまで手を出している姿を、子供が知ったらしめしがつかないので付き合っているだけです」
「お優しいことで」

喉の奥で笑いながら冗談のように言うと、見下した目で睨みつけてきた。

「ハハン、貴方は本当に自尊心や慎みと言うものがないようですね」
「ああ、お前の趣味か? 慎み深い、深窓の令嬢的なのが」

だったら、お門違いもいいとこだな、と見上げながら言うと、首に桔梗の手がかけられた。

「今、この手に力を込めればどうなるか、わかりますね?」

冷たい目で見下ろす桔梗は、その顔に笑みを湛え脅すように軽く手に力を込めてきた。

「やってみろバーロー」
「……ハハンッ、脅しも貴方にとっては余興にすらなりませんか」
「退屈しのぎができれば何でもいいぜ? こんな馬鹿げた世界が忘れられるならなぁ」

ゆっくりと離れていく手を見ながら、ニヤリと笑うと。
また、桔梗の顔が歪んだ。



退屈させるな
くだらない感情ごと利用してやる


end
(2010/04/15)
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