桔ザク

「好きですザクロ」

ギュッと手を握りこまれ、真剣に見つめられ、とろける様に甘い声で言われた。
それが、女がこの状況下に置かれたら間違いなく卒倒ものの告白だったと理解するのに、五分かかった。

「……………はぁ?」

一瞬自分の耳が詰まったのかと思い、聞き返すように気の抜けた声が出た。

「貴方のことが好きです、私と付き合っていただけますか?」

どこへ行くんだと言うツッコミは通用しそうになかった。
そんな真剣な目で見られると現実逃避したくなるんだけどよぉ……

「桔梗……お前ゲイだったのか?」
「ハハンッ、違いますよ」

ニッコリと笑顔を向けられながら、さらに手を強く握られ。
遅ればせながらゾワリと鳥肌がたった。

「おい、離せバーロー」
「ザクロ、貴方からの返答をまだ聞いていないのですが?」

腰にくる声で囁くように言うな、んなもん女にでも言え。
答えなんかNOに決まってんだろバーローッ!
と、言いたかったが、盛大に振ったが最後、無理矢理……と言うのもありそうな。
真6弔花の優しいリーダー桔梗を前に口をつぐんだ。

「何も言わないと言う事は、受け入れていただけると思っていいですか?」
「いや、待てバーロー……」

とにかく、誤魔化してうやむやにするのが一番だと。
今にも現実逃避をしそうな自分を叱咤して、懸命に言い訳を考えた。

「気の迷いってのもあるだろ、疲れてんだろお前」
「ハハン、私の事を気遣っているのですね……心配しなくても、これは気の迷いではありませんよ」

うっとりと、いかにも嬉しそうに言ってくる桔梗。
おい、今の言葉に喜ぶ要素があったか?

できれば気の迷いであって欲しかったぜバーロー、真面目な奴だと思ったのによぉ……

何考えてるのかいまいちよく分からない白蘭様や、正体不明のトリカブトや。
電波ちゃんなブルーベルや、始終おどおどしてやがるデイジーと違って。
細かい気遣いを向けてきて、まともな奴だと思ったんだけどな……

暇な時はカードゲームよくやったな。
負けてばっかりな俺の罰ゲームを笑顔で貸しにしといてくれたり。

だりぃって言えばマッサージとかしてくれたなぁたしか。
きわどい所まで揉まれた時は驚いたけどな。

酒飲みに行って、たとえ酔いつぶれてもベッドまで運んでくれたりよぉ。
なんでか運ぶときは横抱きばっかだったけどな。

朝起きるのが苦手な俺の所に毎日来て起こしてくれたりなぁ。
服がはだけてたり、やたらと桔梗の顔が近い時もあったけどな。

…………あれだなバーロー、今思い出してみれば、所々に下心が見え隠れしてやがったな……


「わりぃ、桔梗……頭痛くなってきやがった」

考えすぎて頭痛が、色々な意味で疲れが出てきた。

「ハハン、大丈夫ですかザクロ? 早く休まないといけませんね」

心配そうにしながら、お前が嬉しそうに見えるのは気のせいだよなぁ、桔梗……
それから、腰に手をまわしてくるのは何でだバーロー……



告白までの過程
気づかなかった俺が悪いのか?


end
(2010/04/13)
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