桔ザク

目をあけようとすると、布のような物が巻かれていて、視界一面が暗かった。

「……桔梗、そこにいるのか?」
「ええ、いますよ」

気配だけが妙に鮮明で、近くに桔梗がいて、いつもの様に笑っている事がわかった。

「何のまねだ、バーロー」

桔梗へ疑問を投げかけながら、結び目を解こうと手を目隠しをしている布へと伸ばした。

「駄目ですよ、ザクロ」

ソッと手を掴まれ、結び目を解く事はできなかった。

「……桔梗、いい加減にしろよ」
「ハハン、貴方が私以外を見ようとするからですよ」

怒気を露に苛立ちながら、手を掴んできた桔梗へと言葉を放つが。
桔梗はクスクスと笑いながら当然の事の様に言ってきた。

「ザクロ、私以外を見ないでください。その瞳に、私以外を映さないでください」

掴んだ手を放し、ソッと抱きしめてくる桔梗は、耳もとで囁いてきた。

「……バーロー、これじゃお前まで見れねぇだろ?」
「ハハン、外したら、また貴方は他人を見るつもりですね? そんな事は許しませんよ」

本気で言ってくる様子に、狂ってやがる、と思ったが。
囁きかけてくる桔梗の声が、やけに嬉しそうに聞こえた。

「桔梗、気がすんだら外せよ?」
「ハハン、貴方が私以外を見ないと誓うのなら」



目隠し
それでも許す自分はどうかしている


end
(2010/04/01)
万愚節の残り
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