桔ザク

変だと思ったことは一度ではなかった気がします。


「バーロォ、こんな所で……」
「ハハン、恥ずかしいのなら、おねだりすれば移動してさしあげますよ?」

その可愛らしいお口で、とからかう様に言えば、
負けず嫌いの性格から、意地になって言うはずのないザクロ。

「ッ……!!」

案の定、怒りに顔を赤くしながら睨みつけてくる。


『いっそ此処までくると、すがすがしいですね』


キッ、と睨みつけてくるザクロの頬に手を添え近づく……


「桔梗~びゃくらんが呼んでるよっ!」

扉をノックもせず入って来たブルーベルは、元気よく言う。
パッとザクロから離れブルーベルを見る。

「ブルーベル、女の子なら部屋に入る時はノックぐらいするものですよ?」

優しく忠告すると、頬を膨らませてブルーベルは返事を返した。

「ニュッ、次からはそうするもん!」

入って来た時と同様、パタパタと走って部屋を出て行くブルーベル。


『どうやら、ザクロのことは目に入らなかったみたいですね……』

さて、と振り返ると怒りのあまりフルフルと肩を震わせているザクロがいた。


「残念ですが、続きはお預けのようですね」
「バーローッ! さっさと行っちまえ!!」


ああ、可愛いと思いながら、怒鳴るその口に軽くキスをして。
蹴られないうちに部屋を出て行く。

何度目かの白蘭様の呼び出しのために……


「白蘭様、少し質問をしてもよろしいでしょうか?」
「ん~? 何かな?」

ニッコリと笑いマシュマロを食べている相手に、こちらも微笑みながら質問する。

「なぜ、私とザクロの逢瀬の最中にばかり呼び出すのでしょうか?」
「気のせいじゃないかな?」
「さすがに十数回目となると、それでは済まされませんよ」


「アハッ、ばれた?」
「笑って済まさないで下さい」
「桔梗チャン、今すっごく顔が恐いよ?」

なおもからかうように笑う悪魔に冷笑しながら答える。


「ええ、怒っていますから」



何度目ですか?
「くだらない事に力を使わないで下さい」


end
(2010/01/11)
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