桔ザク

「愛しています」
「……バーロー、軽々しく言うな」

眉を寄せながら不機嫌そうにザクロは桔梗を睨んだ。
触れ合いそうなほど近くでザクロの顔を覗き込んでいた桔梗は。
クスリと笑い、紅い髪を掻き揚げ、額にキスを落とした。

「ハハン、貴方は愛と言う言葉に対して、重きをおいているようですね」
「つーか、離れろバーロー」

押し退けるように手を伸ばすザクロに、軽く目を細めながら苦笑した。

「心外ですね、こんなにも穏やかな時間が、いつまで続くか分からないからこそ、近くにいたいと思っているだけですよ」
「ヤった後のベッドの上で言う言葉か?」
「ハハン、貴方が素直になるのは、奥まで突かれている時だけですか?」
「……お前は下品な事言っても得するタイプだなバーロー」
「お褒めにあずかり光栄ですよ」

褒めてねぇよ、と内心でツッコミを入れたザクロは。
暫く黙った後、桔梗の髪を掴み引き寄せた。


「……ハハン、珍しいですね、貴方からとは」
「バーロー、たまには答えねぇと、張り合いがなくなんだろ?」

悪戯が成功した子供の様に口元を上げたザクロは、掴んでいた桔梗の髪を放した。

「……ザクロ」
「何だバーロー?」
「たとえ使い古された言葉でも。私は、この感情を伝える事のできる、この言葉が好きです」
「……そうかよ」



始めの言葉
「愛しています、ザクロ」


end
(2010/03/25)
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