桔ザク

「食べ方というものを知っていますか?」
「は? 何だよ急に」
「ザクロの食べ方ですよ」
「何で俺だバーローッ!!」

机を叩き、怒り心頭で桔梗を怒鳴るが。
何処吹く風で流された。


「ハハン、誰が貴方だと言いましたか? 果物の柘榴ですよ」


コロリと桔梗が机に出してきたのは、紅く熟れた柘榴の実


「……ぜってーわざとだろ」
「何か言いましたか?」
「何でもねーよバーロー……」

拗ねるザクロを無視して、桔梗は話しを続ける。


「剥きにくく、食べにくいと言われていますが、案外食べ方を知っていれば楽なんですよ」
「バーロー、んなもん真っ二つに割って食べればいいだろ」

こんな風に、と柘榴の実を取り力任せに割ると、実の中からは真紅に染まった粒がぎっしりと詰まっていた。

「ハハン、野蛮ですね。正解は切り込みを入れて水の中で割って取り出すんですよ、服に果汁がつくととれにくいですから」

言う前に割ったためザクロの服には果汁が点々とついていた。


「食べられれば同じだろバーロー!」

ガブリとかぶりつき紅い実を食べる。

「柘榴の実は、人間の味がするそうですが、いかがですか?」
「ゴホッ!?」
「ハハン、冗談ですよ」
「バ、バーローッ! 人が食ってる時に言うな!!」


咳き込み顔を赤くして怒鳴るザクロを見て、クスクスと笑いながら口を開く。


「昔は、そう言われていたんですよ……割った断面が赤く、人の頭を割れば、そう見えそうだった事と、食べた口もとが、血を滴らせている様に見えたそうですから」

紅い果汁の滴るザクロの唇に、そっと近づきながら桔梗はつぶやいた。


美味しい食べ方
「いかがでしたか、お味は?」


end
(2010/01/10)
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