桔ザク

「はぁ……」

今日、何度目かのため息が出た、原因は目の前にいる人物だった。

「なんだ、ばーろぉ、俺のさけがのめねーのかぁ?」
「貴方は飲みすぎですよ」

そっけなく冷たく返すが、そんなものお構いなしに。
ほろ酔いどころか、後一歩で泥酔状態になるザクロは絡んでくる。

「うー、ばぁろぉ、つめてーなー」
「ハハン、あまり飲み過ぎないようにと、あれほど言ったはずですが?」
「うるせー、お前ものめ!」

ピキリと青筋をたてそうになった。
どうせ、今この状況で何をしても身に付かないことは、既に知っていたが。
どうすれば、戒めと言うものを覚えこませる事ができるのかと本気で思案した。

「聞いてんのか、ききょー?」

何も覚えないザクロは、酔うと絡み上戸になるようで、必要以上に近づき、抱きついてくる。

泥酔状態になったザクロを、その後ベッドへと運ぶのも。
この状況を放置して、誰かにザクロが抱きつくのも、どちらも嫌だが。
今この状況も色々な意味で耐えられなかった。

「ききょーのばーろー、無視してんじゃねーぞ?」
「ザクロ、顔が近すぎます」

また、何度目かのため息が出た。

「なんだばーろぉ、人の顔みてため息ついてんじゃねぇ」
「ハハン……どうなっても知りませんよ?」
「あ?」

ぼんやりとした目で覗かれ。
無駄なことと知りつつも、その体に手をかけた。



酒とため息
舌に残る酒の味は甘かった


end
(2010/03/11)
47/100ページ