桔ザク

目を細め、簡素な墓標を眺める。

「ザクロ……私は今でも、白蘭様を怨みきれないでいます」

懺悔するように呟かれた言葉は。
誰に聞かれることも無く、掻き消えていった。

「貴方を殺した人だと言うのに……貴方に会わせてくれた人だと思ってしまうからです」

サラサラと冷たい風が吹き、髪を揺らす中。
持っていた花をたむける。

「ハハン、涙すら涸れるほどの悲しみは始めてでしたよ?」

何の反応もかえって来ない、そんな事は知っていたが。
それでも、囁くように言葉を紡ぐ。

「たとえ、貴方が二度と、私の名前を呼ぶ事がなくても……」

目を閉じ、言葉をとぎらせてから。
微かに淡い笑みを浮かべ。
いとおしむ様につぶやいた。

「愛しています、ザクロ」



場にそぐわぬ、たむけの花
何よりも紅い一輪の薔薇


end
(2010/03/09)
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