桔ザク

「別れましょう、ザクロ」

ひどく、唐突な言葉だった。
思い悩んだ様な顔で、それでも、微笑みながら桔梗が言った。
優しげな表情は、傷つけないための配慮のように見えた。

「……良いぜバーロー」

僅かな間の後、口もとを歪めながら笑ったザクロは、桔梗を見ながらはっきりと言った。

「元々、こんな関係不自然だったもんなぁ?」
「ザクロ」
「白蘭様がいなければ、会う事すら無かったんだ」
「……ハハン、そうですね」

淡々と言葉を紡ぐザクロ、その様子を見て、ほろ苦く微笑んだ桔梗は。
一瞬だけ目を閉じてから、ザクロを見据えた。

「では、これで終わりにしましょう」
「良いぜ、バーロー」

簡素で、それでいてはっきりと離別の言葉を言った桔梗は、背を向けて歩いていった。


「……それが、お前の選んだもんなら、しかたねーよな、バーロー」

残された部屋で座り込みながらつぶやいた。

「つーか、優しすぎだろバーロー」

悪態をつくように言い、髪を掻き揚げながら、
眉を寄せて、ため息をついた。

「あー、だりぃー……」




「始めから、不自然な関係、ですか」

部屋を出て、歩いていた桔梗は、足取りを止め、壁に身を預けながら、目を細めてつぶやいた。

「ハハン、そうかもしれませんね」

微笑もうとした口もとは、歪んで上手く微笑む事ができなかった。

「……これで、良かったのでしょうか」

自分で別れを切り出したはずなのに、悲しげな表情で言葉は紡がれた。

「ハハン、いけませんね、これ以上情が深くなれば、辛くなるだけだと言うのに」

悪魔そのものの様な絶対君主を思い出しながら、揺るぎそうな思いを叱咤する。

どちらが先に死んでも、辛くなる事は分かっていて。
これ以上、情が深くなる前に……そう思っているのに。

今すぐにでも、抱きしめに行きたくなる自分がいた。

「ハハンッ、私は耐えられるのでしょうか?」



愛別離苦
ただ、相手の事を思い合う


end
(2010/03/01)
ななは様リク『桔ザクのシリアス、別れ話』
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