桔ザク

「それでね~桔梗v」

ブルーベルは桔梗の隣でぺちゃくちゃとお喋りを楽しんでいた。


「ブ、ブルーベルそろそろ僕チンも桔梗と話したいんだけど……」
「何よ、知らないもん!」
「うっ……」

ブルーベルの隣に座っていたデイジーは、ブルーベルの押しの強さにすごすごと黙ってしまった。


「たく、何の時間だバーロー……」

その様子を見ていたザクロは小言で毒づいた。
始めのうちは確か自分が桔梗と話していたんだけどなー、とか愚痴にも思われることを考えながら。
手元に置かれていたコーヒーをすすった。

「……」

案の定の苦い味にわずかに顔をしかめた。
ブルーベルとデイジーの前にあるカップを一瞥してから、このコーヒーを淹れてきた桔梗を睨んだ。

別にコーヒーが苦いのは当たり前で。
苦ければ砂糖を入れれば良いと言われてしまえば、それまでの事だが……

机の上には砂糖など無い。
わざわざ、個別に飲み物を淹れてきた桔梗は、砂糖を持ってこなかった。

『別に、苦いのでも飲めるけどよぉ……』


基本的に苦いものより甘いものの方が好きなザクロは恨めしげに桔梗を見た。

ザクロに気が付かない桔梗は、ブルーベルの話しに相づちを打ちながら紅茶を飲んでいた。
ブルーベルは気にしていないが……と、言うより桔梗の事で頭がいっぱいで覚えていないだろうが、その前にはココアがあった。
その隣で、デイジーは話しにまじれないので手元に置かれていたミルクティーを飲んでいた。

ひとしきり目の前の3人の様子を見ていたザクロは香りばかりが良いコーヒーを一気に飲み干し。
空になったカップを机に置いた。


「ブルーベル、私はそろそろ仕事をしなければいけませんので」
「え~!?」


ブルーベルの驚く顔すら見ず、
桔梗は立ち上がりザクロの近くへと歩き出した。


「行きますよザクロ」
「あ? バーロ、俺は仕事なんて無いぞ」
「ハハン、白蘭様からの新しい命令ですよ」
「バーロー! 先に言え!!」

白蘭と言う言葉を聞いたとたん、コロッと態度を変えたザクロは桔梗の後へと付いて行った。

「早く言えよバーロー」
「あわてないで下さい、ザクロ」

飲み物を淹れている桔梗を急かすように言ったが、
桔梗は変わらずマイペースに飲み物を淹れて持ってきた。

「どうぞ」
「……桔梗、何のまねだよ?」
「飲みたかったのでしょう? 貴方はコーヒーより甘いものの方が好きですから」


目の前に出されたのは、甘いホットチョコ。



貴方のために淹れました

「バーロッ、お前知っててッ!」
「ハハン、よく我慢して飲めましたね」



end
(2010/01/10)
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