桔ザク

「君達って、何でそんなに仲が良いの?」

だらけて眠っているザクロの傍らで、機嫌よく読書をしていた桔梗は、白蘭の言葉に本から視線を外した。

「そうでしょうか?」
「ほんとさー、どうしてザクロ君は桔梗チャンに頼るの?」
「うぃ~……なんですか白蘭様?」
「は~、本当に君達が羨ましいよ……」

桔梗の言葉も、寝ぼけながらのザクロの言葉も、少しも聞いていない白蘭はため息をつきながら落ち込んだ。

「……何かあったのですか、白蘭様?」

気遣いを向ける桔梗の言葉に、バッと顔を上げ期待するかのような目で白蘭は迫った。

「聞いてくれる、桔梗チャン!?」
「は……はい」

鬼気迫る様子で近づかれた桔梗は、若干引き気味に返事をした。

「正チャンがさー、冷たいんだ」
「入江正一……ですか?」
「そう、今日なんかせっかく何回も連絡したのに、最後なんかノーマル回線で連絡してあげたのに、傍受されますよ、とか怒ったんだよ……あ、でも怒った顔も可愛いんだけどね。でもやっぱり、何ていうのかなぁ、こう、何でも受け入れてくれても良いんじゃないのかなって思うんだよね、その点ザクロ君は桔梗チャンのことを何でも受け入れるよね、何でそんなに寛大なの? それとも正チャンに対する愛が足りないのかなー、やっぱり24時間体制で一緒にいないと頼ってくれないのかなぁ? 遠距離恋愛も絆を深めるのに大切かなって思って普段会うのを我慢してたけど、君達を見てると一緒にいる時間も大切なのかなって思えてくるんだ」

「白蘭様……?」

どんどんと喋り続ける白蘭に、引きつった笑顔を向けながら桔梗は名前を呼ぶが、聞いていなかった。

「ああ、正チャン、正チャン、正チャン! 全部正チャンのためにやってるのに、指輪まで渡してプロポーズしたのに! あっ、もしかして婚約指輪じゃなかったからいけなかったの? ごめん正チャン、今度は偽物のマーレリングじゃなくて本物の婚約指輪を渡すよ!」

桔梗は額に手を当てながら、白蘭のトークをものともせず眠りかけていたザクロに小声で話しかけた。

「ザクロ、起きていますか?」
「んぁ? 何だよ桔梗……」

明らかに夢の中へと行きかけていたザクロ。

「私を置いて一人だけ現実逃避をしないでください」
「あ~? ……たりぃ」
「寝ないでください、ザクロ!」

寝ようとしているザクロを揺さぶりながら、まだ延々と喋っている白蘭を見て、本気で頭痛のしてきた桔梗だった。



人の話しは聴きましょう
迷惑でない程度に……


end
(2010/02/13)
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