桔ザク

「白蘭様を抱いてきたのかよ」
「ハハン、そんな質問をして、私にどう答えて欲しいのですか?」
「命令だから抱くのかよ……」
「ええ、そうですよ、白蘭様の命令を聞かないと言う選択肢は、私にはありませんから」

縋る様に、辛そうな目で見てくるザクロを、何の感情も無い目で見返す桔梗は、目を細めながら言葉を続ける。

「それとも……貴方を抱くためだけに、私に白蘭様の命令を背けと言いたいのですか?」

ゆるりと、艶やかな笑みをザクロに向ける。


「貴方に、そんな権利は無いはずですよ?」

白蘭を抱いた手と同じ手で、服を脱がせていく。

「この関係を、やめても良いですよ? 私はただ、退屈しのぎができれば良いのですから」

首筋に顔をうずめ、赤い痕を残しながら、耳もとで囁く。


「貴方でなければ、と言う理由は、私にはありませんから、もっとも……貴方は私でなければ嫌なようですね?」


自分の服を乱すことも無く、淡々とことを進めていく。


「やめたければ、ただ一言、言えば良いのですよ? ザクロ」

甘い毒のような言葉は、優しさを含んでいる様に聞こえる。



誰も愛しはしない
そんなことは知っていた


end
(2010/02/01)
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