桔ザク

この手にかき抱いて。
その瞳に自分を映して。
それでもまだ……足りなかった。


「ザクロ」

意識が朦朧としている相手に、何を言っても意味は無い。
そんなことは知っていた。


ベッドへと散らばる紅い髪。
自分が映りこむ瞳。
艶やかなあえぎ声。
縋り付いてくる手。
涙に濡れた頬。


「ザクロ……」



こんな時に言うのは
卑怯だと解っていました

「貴方を……愛しています」


end
(2010/01/31)
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