断片話

◆真摯


「悪い冗談だなバーロー」

簡素に言い放った言葉は相手の機嫌を損ねたらしい。

「ハハンッ、随分な言い様ですね?」
「冗談としか言えねーだろ」
「私は本気ですよ?」

冗談ならばまだ苦笑いで済ませられたが、相手の目を見てその可能性は捨てた。

「何がいいんだかなバーロォ」
「人が恋をするのに、理由が必要ですか?」
「必要ねーとは思うけどなぁ、さすがに釣り合いぐらいは考えろよ、少しは」
「私では、貴方に釣り合わないと言いたいのでしょうか」
「逆だバーロー。お前、自分の顔をちゃんと認識してんのか?」
「ハハン、身支度をする時に見ていますよ」
「そーじゃねぇだろ……」

常識を求めるのは無理なのかと頭を抱えたくなった。


(2011/12/02)
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