桔ザク

「   」

小さく口にする。
誰にも聞かれない言葉は、ただ暗い闇の中へと消えていった。

「……    」

何を考えようと……それは許されない事だった。



「ねぇ、ザクロ君。何を考えてるのかな?」


にこやかに笑いかけながら白蘭は問いかける。

「白蘭様のことです」
「ん~、良い答えだね。よかった、また桔梗チャンの事でも考えてるかと思ったよ」
「あいつの事なんか知りませんよ」
「だよね~、ザクロ君は僕だけの事を考えてれば良いんだからね?」

触れられたのは、胸に入れられた匣。

「俺には……白蘭様だけです」


逆らうことのできない鎖は絡まる。



「桔梗」


その言葉は、許されるはずも無く。

けれど、ただ……



「……桔梗ッ」



匣は全てを壊す
お前の名を呼びたいだけなのにな


end
(2010/01/22)
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