断片話

◆喧嘩師


「ハハン、悪目立ちはしないよう言ったはずですが?」

血の混じった唾を吐いてから、悪びれもせずザクロは桔梗を見た。

「そうだったか、バーロー」

地面に突っ伏す男達を跨ぎ、表通りへと足を向けるザクロ。
すれ違いざまに桔梗はザクロへと言葉を投げ掛けた。

「貴方は少々派手に立ち回りすぎです」
「小言ならきかねーぜ。勝手に突っ掛かってきたのはそいつらだ」
「この事は白蘭様に報告しますよ」

聞く耳持たないように言う桔梗に対し、ザクロは苛立たしげに髪を掻いてから立ち止まり振り返った。

「やけにきつい態度だなバーロー」
「ハハン、そうですか?」
「匣か嵐の炎でも使ってさっさと終わらせてりゃ、少しは許してたか?」
「そうですね、貴方が怪我を負わなければ、少しは大目に見ていたかもしれませんね」

軽く口元に笑みを浮かべながら答える桔梗。
その表情に対し、相当怒ってやがるなとザクロは怯んだ。


(2011/05/07)
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