桔ザク

「ザクロ……」


なんて、愚かで。


「ザクロ」


罪深い事を考えているのだろうか……

呼び出された部屋の中を見て、心を締め付けられた。



「遅かったね、桔梗チャン」


ゆったりとソファに座る絶対君主……
その隣にいるのは。

「もう少し早ければ良いのが見れたのにね?」

気を失い、力なく横たわるザクロ。


「……何の用でしょうか、白蘭様?」

隠そうともしない、赤い所有印。
今にでも、耐えられそうに無くなる感情を、手を強く握り締めることにより抑える。


「ちょっとメローネ基地の方に行かないといけなくなったから、留守番をよろしくね?」
「わかりました白蘭様……お気をつけて」
「ん、じゃあ行ってくるね」


残された部屋の中。
気が付けば握っていた手からは血が出ていた。


「それが……望みですか、白蘭様」

胸に入れられた匣がキシリと痛んだ。

「……残酷な方ですね」


知っていながら呼んだのだ。
解らせるために残したのだ。
自分のものだと知らしめるために……


「    ……」

近くにいるのに。

「   」

手を伸ばせば、触れられる距離にいるのに。
それは、許されない事だった……



「本当に……悪魔の様な人ですね、白蘭様」



壊れることのない匣
触れることも、名を呼ぶことすら許されない


end
(2010/01/22)
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