桔ザク

音も立てず、ただ流れ落ちるそれを、ぬぐうことはできなかった。


「貴方は……まだ、在りもしない神を想っているのですか、ザクロ」


静かに寝ているザクロ。
その伏せられた瞳からは。
透明な水滴が伝っていた。


「忘れてしまえば良い……いっそ、神などこの世界にはいないと知れば良い……」

自分の口から出る言葉は届かない。
手を伸ばせば、すぐにでも拭うことができるのに。

綺麗なそれは、触れてはいけないモノのように感じて。
その涙を拭うことは、ためらいがあった。



涙は触れることすらできない
「ザクロ……早く、起きてください」


end
(2010/01/21)
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