断片話
◆無頓着
前方から歩いてきた人物を見て口元が綻んだ。
「ハハン、白蘭様からの用件は何でしたか、ザ……」
言葉を止め、相手が近づいてくるのを眺めた。
人違いではない、はずだった。見慣れた紅い色の髪、始終気だるそうにしている姿。
ただ、普段目にしている相手とは何か決定的に違った。
「おう、桔梗かバーロー」
「ザクロ、ですか?」
「他に誰に見えんだ?」
「いえ……」
全体的に小さいので。
喉まで出かかった言葉を飲み込み、改めて違いを探した。
無精髭がない。自分より高いはずの身長が見下ろすぐらいになっている。服が全体的に余っている。
「……白蘭様の実験に付き合ったのですか?」
「ん? ……ああ、だから疑問系で訊いてきたのかバーロー」
「今度は何の実験ですか?」
「若返りだとよ。成功したみてーで満足してたぜ」
「貴方は……万が一失敗だったらと言うことを考えないのですか?」
ザクロの言葉に、顔を顰めながら桔梗は訊いた。
「何だバーロー。白蘭様が試してぇって言ってんだぜ?」
「そうですが、だからと言って」
「どーせ暫くしたら戻るんだぜバーロォ? 第一、白蘭様が試したがってるやつの大半は、本当は他の奴で実験済みだろ」
「そう言いながら、貴方は修羅開匣の時も平気で回復力の実験に付き合いましたね」
「ああ? 怒ってんのかよ」
眉を寄せて桔梗を見上げるザクロは、何が悪いのかと言いたげだった。
そんなザクロの態度は百も承知の桔梗は、ため息をついてから口を開いた。
「ハハン、気が気ではないだけです……貴方は白蘭様の命令だと容易に承諾するので」
「お前は心配しすぎだろ。白蘭様の命令にゃ従うけどよぉ、何もそこまでヤバイ実験じゃねぇだろ?」
「だから、貴方のことが心配なんです。もしもの事を考えない」
(2011/03/11)
前方から歩いてきた人物を見て口元が綻んだ。
「ハハン、白蘭様からの用件は何でしたか、ザ……」
言葉を止め、相手が近づいてくるのを眺めた。
人違いではない、はずだった。見慣れた紅い色の髪、始終気だるそうにしている姿。
ただ、普段目にしている相手とは何か決定的に違った。
「おう、桔梗かバーロー」
「ザクロ、ですか?」
「他に誰に見えんだ?」
「いえ……」
全体的に小さいので。
喉まで出かかった言葉を飲み込み、改めて違いを探した。
無精髭がない。自分より高いはずの身長が見下ろすぐらいになっている。服が全体的に余っている。
「……白蘭様の実験に付き合ったのですか?」
「ん? ……ああ、だから疑問系で訊いてきたのかバーロー」
「今度は何の実験ですか?」
「若返りだとよ。成功したみてーで満足してたぜ」
「貴方は……万が一失敗だったらと言うことを考えないのですか?」
ザクロの言葉に、顔を顰めながら桔梗は訊いた。
「何だバーロー。白蘭様が試してぇって言ってんだぜ?」
「そうですが、だからと言って」
「どーせ暫くしたら戻るんだぜバーロォ? 第一、白蘭様が試したがってるやつの大半は、本当は他の奴で実験済みだろ」
「そう言いながら、貴方は修羅開匣の時も平気で回復力の実験に付き合いましたね」
「ああ? 怒ってんのかよ」
眉を寄せて桔梗を見上げるザクロは、何が悪いのかと言いたげだった。
そんなザクロの態度は百も承知の桔梗は、ため息をついてから口を開いた。
「ハハン、気が気ではないだけです……貴方は白蘭様の命令だと容易に承諾するので」
「お前は心配しすぎだろ。白蘭様の命令にゃ従うけどよぉ、何もそこまでヤバイ実験じゃねぇだろ?」
「だから、貴方のことが心配なんです。もしもの事を考えない」
(2011/03/11)