断片話

◆愛玩


「何で俺だ、バーロー」

睨みつけるように言う相手。
その問いに対する答えを考えるのに、さほど時間は掛からなかった。

「貴方が一番都合が良いからですよ」

返した答えに予想がついていたのか、一段と相手の表情が険しくなった。
今更過ぎる陳腐な質問。
率直な回答をした事に少し後悔をした。
いっそ、愛しているからです、とでも返した方がもっと別の反応を見せたのだろうか。
それとも、どんな答えを返しても結果は同じだったのか。
どの道、口に出した言葉に間違いはないのでかまわないと結論付けた。

「他の奴でもいいだろ」
「ハハン、貴方は自分さえよければいいと言いたげですね?」
「そりゃそうだろ。テメェの暇つぶしに付き合ってたら体がもたねぇよ」
「だから、貴方が一番都合が良いのですよ」

手を触れ難いほどに信仰している人物でもなく、幼くもない。
醜い欲をぶつけるのに丁度良い相手。

「私としては、貴方が女性でなくて良かったと思いますよ」
「避妊がめんどくさくなくて、てか? 外見に似合わず随分とひでぇな」
「手荒に扱ってもさほど心が痛みませんから」
「テメェのその性格。白蘭様にバレねぇといいなぁ?」
「ハハン、私は優しい性格なので、心配をしていただかなくても結構ですよ」

何処がだ、と言いたげな相手の目を見返し、悪態をつく口を黙らせるように奥へと突き入れた。
首を仰け反らせ、強くシーツを握り耐える相手。
色に溺れながら、それでも睨みつけてくる目に苦笑した。
高くもない擦れた嬌声。屈服を知らない態度。
そのどれもが煽る対象になる事に、何故気付かないのか。

「本当に、貴方は都合が良いですよ。ザクロ」


(2011/03/03)
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