桔ザク

瓦礫の山の中、ザクロはただ悠然と残る建物の中へと足を踏み入れた。
ステンドグラスから差す光は、辺りを神々しく照らす。
奥にある十字架を眺めながら、自然と自分の口から出そうになった言葉をかみ締め、踵を返して出て行こうとする。


「ハハン、とても良くお似合いですよ? ザクロ」


腕組をして出てくるのを待っていた桔梗が声をかけてきた。

「いっそ、戻られてはいかがですか? 神のもとへ」
「バーロー、神がいるかよ」

冷笑をして足を速める。
そんな様子を見て桔梗は言葉を続けた。

「主よ、何故私にこのような力を、お与えになったのですか」


歌うように響く声、その言葉に通り過ぎようとしていた足を止め、桔梗を振り返る。


「破壊しか生まないこの力を、何故私が持っているのでしょうか?」


微笑しながら足音を高らかに響かせ、教会の中へと入って行く。

「やめろ……」
「ああ、主よ哀れなる子羊をどうか……」
「やめろッ!!」

先ほどよりも強くなった声に、桔梗は口を噤む。
燃えるような目で睨んでくるザクロを見て目を細めた。


「御気に召しませんでしたか?」
「冗談でも……俺の前で二度と言うな」

喉の奥から出る笑いを止めようともせず、桔梗はザクロへと近づく。


「ハハン、救いようの無い人ですね、悪魔に使えながら、その心はまだ神へとすがっている」
「桔梗、やめろ」
「白蘭様のことを神とでも思っているのですか?」
「桔梗ッ!!」



その魂は救いようがなく
「神など、いませんよ?」


end
(2010/01/21)
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