断片話
◆if:違う出会い方
「たく、めんどくせーなバーロォ」
紙袋を抱え直し、地面にのびたスリから財布を拾い上げた。
路地裏から表通りへと歩き、目立つ淡い色の長髪の人物へと小走りに足を進めた。
スリにあった事にも気付かない相手は、ゆったりと歩き続けていた。
追いついたところで財布を持ったままの手で相手の肩を軽く叩いた。
「ハハン、何ですか?」
「お前のだろ?」
振り返る相手へと財布を差し出したまま、親切心など出すものではないと後悔した。
「……貴方が、拾ったのですか?」
怪しみ、不快さを表情に混じらせる相手。その顔に、またかと思った。
財布を持っていた手に軽く力を込め、叩き返すように相手に投げた。
「次は盗られないように持っとけバーロー!」
不快そうな顔をする相手を睨みつけ、紙袋を抱え直し踵を返した。
スリの標的にされても気付かない無用心で間抜けな観光客。
そのくせ、他人の言葉をとことん信用しない。
中身に一切手をつけていないと言っても、その場で不快そうな顔のまま確認する。
誤解が解けたとしても、次に礼金目当てかと此方を睨み、金を叩き渡す。
「クソッ、無駄な時間だったぜバーロォ」
(2011/03/03)
「たく、めんどくせーなバーロォ」
紙袋を抱え直し、地面にのびたスリから財布を拾い上げた。
路地裏から表通りへと歩き、目立つ淡い色の長髪の人物へと小走りに足を進めた。
スリにあった事にも気付かない相手は、ゆったりと歩き続けていた。
追いついたところで財布を持ったままの手で相手の肩を軽く叩いた。
「ハハン、何ですか?」
「お前のだろ?」
振り返る相手へと財布を差し出したまま、親切心など出すものではないと後悔した。
「……貴方が、拾ったのですか?」
怪しみ、不快さを表情に混じらせる相手。その顔に、またかと思った。
財布を持っていた手に軽く力を込め、叩き返すように相手に投げた。
「次は盗られないように持っとけバーロー!」
不快そうな顔をする相手を睨みつけ、紙袋を抱え直し踵を返した。
スリの標的にされても気付かない無用心で間抜けな観光客。
そのくせ、他人の言葉をとことん信用しない。
中身に一切手をつけていないと言っても、その場で不快そうな顔のまま確認する。
誤解が解けたとしても、次に礼金目当てかと此方を睨み、金を叩き渡す。
「クソッ、無駄な時間だったぜバーロォ」
(2011/03/03)