断片話

◆素敵な日
(桔ザク前提ルッスザク)

「可哀相な人……いっそ諦め切れれば良いのに」

優しく、愛おしむように呟きながら、自分のもとへと身を寄せ眠る人物を眺めた。

「でも、今の状況って願ってもない事ね」

弱っている間に付け込むことは、難しいことではない。
慰め、甘やかし、その強い心へと入り込み、じわじわと自分の存在を刻み付ける。

「本当は、あのロン毛のお兄さんが貴方を何よりも愛してるなんて、絶対に言わないであげるわ」

目を細め、ニッコリと口元を吊り上げた。

「好きよ。貴方に誓ってあげたことは絶対に守るわ。死体になっても一生私のもとで愛してあげる」

涙の跡が残る相手の頬を舐め。目元に滲む涙を吸い、軽くまぶたに口づけてから離れた。

「本当に、今日は素敵な日ね」


(2011/02/13)
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