断片話

◆ややこしい


「悪夢だなバーロー」
「ハハンッ、悪夢ですね」

顔を顰め、気だるげに言い放つ桔梗。皮肉気な微笑を浮かべ相手を見るザクロ。

「で、何でこんな状況になってんだ?」
「知りませんよ、もっとも、一つだけ原因となりうる人物はいますが」

髪を乱雑に掻き揚げながら質問する桔梗に、とある人物の事を思い出しながら言うザクロ。

「ややこしいことになったなバーロー」
「本当ですね……」

ため息をつきあい、相手の顔をまじまじと眺め、二人は口を開いた。

「自分の顔が目の前にあるってのは」
「自分の顔が目の前にあるのは」



「うっわ~、桔梗チャンが男らしい」
「ハハンッ、白蘭様、その言い方ですと普段の私が女々しいように聞こえますが?」
「それから、ザクロ君が大人しい」
「白蘭様、その言い方もどうかと思いますがねぇ?」

柔らかな物腰のザクロと、眉間に皺を寄せ呆れ混じりの桔梗。

「声なんか口調でかろうじて判断できる程度だね?」
「…………では、『どーせくだんねー理由で実験材料にしたんだろぉな』というザクロの心内でも代弁しましょうか?」
「桔梗! テメェ俺の体で白蘭様に暴言吐くんじゃねぇ!!」
「ハハンッ、貴方こそ、私の声でガラの悪い言葉を使わないでいただけますか?」
「うん、それぐらいにしようね。なんかややこしくなってきてるから」

低音過ぎる笑い方も、品の良い声でのガラの悪すぎる言葉遣いも、元を知っているだけにシュールに聞こえた。


(2011/02/11)
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