断片話

◆不明瞭
(桔→ザク未満)

「バーロォ、放せ」
「ハハン、何処へ行く気ですか」
「何処だっていいだろ、テメーにとやかく言われる筋合いはねぇぜ?」
「あります、毎晩何処で遊んでいるのですか?慎みを持っていただかないと白蘭様に迷惑が掛かります」
「小姑みてーな小言言ってんじゃねーよバーロー」
「口で言っても分かって頂けないようなら、実力行使に移りますよ?」

冷静に対応する桔梗の態度に苛立ったザクロは、掴まれていた腕を振り解いた。

「やれるもんなら遣ってみろバーロォ。だいたい、テメェにそんな権限ねーだろ。真6弔花のリーダーってのは認めてやるけどなぁ、個人の私生活にまで関わるのはどうかと思うぜ?」



「白蘭様、ザクロに関わるなとは、どう言う意味でしょうか?」
「ん? どうって、そのままの意味だよ? 何か桔梗チャン、ザクロ君のこと気にかけてるみたいだけど」
「それは……あまりにも目に余る行動ばかりをするので」
「優しいんだね、桔梗チャン……でもね、僕のためって言うなら少し違うよ。別にザクロ君が夜何処へ出かけても僕は気にしないから」
「ですが、部下に示しがつきませ…」

口に指を当てられ、それ以上言う事を制された桔梗は、困惑気味に白蘭を見た。

「桔梗チャン、ザクロ君には今後関わらないこと。いいね?」

優しく、子供に言い聞かせるような口調であっても、其処には有無を言わせないものがあった。
白蘭の命令であるのならば、どんな事でも聞くのが当たり前であるはずだった。
けれど、この時だけはその命令を聞きたくはないと心の片隅で思った。

「……ハハン、わかりました」

口から出るのは承諾の意のみ。白蘭がこれ以上関わるなと言うのならば、これ以上関わりはしないと心に決めるが、何処か釈然としない思いが広がった。
何故こんな気持ちになるのか。何故、白蘭よりザクロの方が気にかかるのか。
その答えは分からなかった。


(2011/01/03)
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