断片話

◆紅玉色


始めは見間違いかと思った。
少し離れているザクロへと振り返り、声をかけようとして止めた。
見入りそうなほどの鮮やかな紅い瞳。
視線の先にある炎が映りこんだにしても説明のつかない色。

「ザクロ」

無意識に声をかけると、不機嫌そうに相手は振り返ってきた。

「何だバーロー?」

振り返ってきた相手の瞳に先程までの色はなかった。
濃いブラウン色の瞳。その事が、少なからず残念に思えた。

「……いえ、何でもありません」
「用がないなら話しかけんじゃねぇ。それと、人の顔ジロジロと見んなバーロォ」


(2011/01/01)
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