パロ系

チリンと、ザクロ猫が身動きをすると首元から音が鳴りました。

「……なんだ?」

寝ぼけながら首元を触れば、その音はさらに煩いほどに鳴り、ザクロ猫は顔を顰め、触るのを止めました。

「ハハン、起きてしまいましたか」
「何でテメーがいるんだバーロー」

ネズミのくせに、堂々と猫の前に出る風変わりな桔梗ネズミ。
クスクスと笑いながら桔梗ネズミはザクロ猫を見ました。

「今日の会議で、貴方に鈴を付けることが決まりました」
「いい度胸じゃねーかバーロォ」

ネズミの分際でよく鈴を付けたものだと嫌みを籠めながら言うザクロ猫。
寝起きの不機嫌さも手伝い、いらつきながら首に付けられた鈴を取ろうとしました。

「……ッ!?」

取ろうと少し触っただけで煩いほどに鈴は鳴り響きました。
耳がよい分余計に煩く聞こえ、高音のそれを聞きたくないと、ザクロ猫は反射的に耳を塞ぎました。

「ハハン、取ろうとしない方が身のためかもしれませんね?」
「外せバーロォ!!」
「何のために貴方に付けたのか解りますか?」
「……潰されてぇのか、クソネズミ共」
「その前に、その鈴の音で逃げられますよ」

ギロッとザクロ猫が睨めば、桔梗ネズミは涼しい顔で流しました。
現実を突き付けられ、ザクロ猫は確かに、この首元の鈴は歩くだけでも相当煩く鳴るだろうと考えました。

「ハハン、会議では余り役に立ちそうにない案だと言われていましたが。実際にはなかなかよい案でしたね」
「策ばっかり練るあの眼鏡ネズミが言いやがったのかバーロー」
「ええ、発案者のくせに自分ではできない、愚かで小心者ですが」

今頃、私に感謝をしているでしょうね、と嘲る桔梗ネズミ。
それを聞いたザクロ猫は、今すぐにでも発案者を殺しに行こうかと立ち上がろうとしました。
しかし、また鈴が煩く鳴り響き、顔を顰めました。

「逃げられるのがオチですね」

苦笑しながら言う桔梗ネズミに、ならばと、ザクロ猫は狙いを変更しました。

「ハハン、私を狙いますか」
「目の前にいりゃあ、捕まえるのもわけねぇだろバーロー」
「窮鼠猫を噛む、と言うことわざを知らないのですか? もっとも、私は貴方を噛む程度ではおさめませんが」

今までにも、何度か桔梗ネズミにしてやられたザクロ猫でしたが、今回こそは、そのすかしたツラを崩してやると睨みました。



ネズミと猫の攻防
食べられるのは、どちらでしょうか?


元ネタ イソップ童話『ネズミの会議』

キャスト

ネコ:ザクロ
ネズミ:桔梗
ネズミ:正一


end
(2010/06/24)
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