パロ系

……あるところに、ブルーベルと言う少女がいました。
よく晴れた昼下がりに、木陰で姉の白蘭と本を読んでいたブルーベルは、いつの間にか眠りについてしまいました。

「ニュ~……あれ、びゃくらんは?」

ぼーっとする目を擦りながら、眠る前までは確かに近くにいた白蘭を探すように、キョロキョロと周りを見渡しました。

「ニュニュ?」

白蘭を見つける事はできませんでしたが、代わりに白いうさぎ耳のついた人物を見つけました。

「どうしよぉ……早くしないと白蘭様に怒られちゃうかなぁ?」

ウサギの縫いぐるみを抱きしめながら、いそいそと早歩きで目の前を通り過ぎていく人物の言葉に。
ピクリと反応したブルーベルは、立ち上がり白蘭がどこにいるかを聞こうと追いかけました。

「ちょっと待ちなさい、そこの白うさぎ!」
「ぼばっ! な、何!?」
「いいから待ちなさいって言ってるでしょ!!」
「な、何か恐いよ……」

大声を出しながら近づいてくるブルーベルにおびえた白うさぎは、まさしく脱兎のごとく走り出しました。

「ニュ~! 待ちなさいって言ったのに!!」

苛立ちながらブルーベルは、白蘭の居場所を知っていそうな白うさぎを追いかけ始めました。


茂みに囲まれたのどかな庭園で。
お茶会でもするかのように、白いテーブルクロスのかかった机には軽食が並べられていました。

「ハハン、何でもない日ですね」

椅子に腰掛け、静かに紅茶を注ぎながら、ダレている三月うさぎのザクロへと桔梗帽子屋は声をかけました。

「あー……そうだなバーロー」

目の前に差し出された紅茶を、のろのろと起きながら手に取りザクロは飲み始めました。

「何でもない日はお祝いをしなくてはいけませんね……と言う訳なので、貴方をいただけませんか?」
「ブッ!? バーロォ! 何でそうなるんだ!!」
「ハハン、紅茶は噴き出すものではありませんよ?」
「お前が変な事言うからだろ!!」

ガチャリとティーカップを乱雑に置きながら、ザクロは口元を拭いました。

「ハハン、変な事ですか? 何でもない日のお祝いに貴方が欲しいだけですよ」
「そこがまず間違ってんだろバーロー! つーか、何でもない日なんて毎日だろ!!」
「ですから、毎日貴方をください」
「このイカレ帽子屋! お前は年中発情期かバーローォ!」

机に手をつき、立ち上がりながら怒鳴りつけるザクロを前に。
桔梗はニッコリと笑いながらなだめる様にその肩に手をかけました。

「ハハン、発情期なのは貴方のはずですよ?」
「ッ、何しやがんだ……」

ソッと首筋を撫でただけでビクリと反応するザクロを。
クスクスと楽しげに笑いながら刈り込まれた芝生へと押し倒しました。

「三月のうさぎは、発情期で狂ったようになるはずですよ?」
「バーロォ、耳さわんな」

ふかふかとした黒いうさぎ耳を触りながら、囁くように近づき、桔梗は喋りました。
意思とは反対に過敏に反応する体により、ろくな抵抗ができないザクロに桔梗が手をかけようとすると、
ガサガサと茂みが動き、ひょっこりとブルーベルが顔を出しました。

「ニュ、こっちに白うさぎが来なかった!?」
「ハハン、こちらには私の黒うさぎしかいませんよ」
「ニュニュ~、何処行ったのよまったく!」

頬を膨らませながらガサリと茂みから顔を抜いたブルーベルはパタパタと走り去って行きました。

「ハハン、あちらには兜のようで兜でないトリカブトがいるので問題ありませんね……では続きを」
「まて、さっきガキが来ただろ、これで何でもない日じゃねぇな!」

嬉々として訴えるザクロに呆れながら桔梗は口を開きました。

「往生際の悪い方ですね」
「いいから放せバーロー!!」

ジタバタと暴れようとするザクロを押さえ込み、クスリと笑いながら桔梗は囁きかけました。

「ザクロ……何でもない日とは、誕生日以外の日のことを言うので、関係ありませんよ?」
「なっ!? いかさまだバーロッ!!」
「ハハン、何とでもどうぞ」

爽やかに微笑んだ桔梗は、ザクロの服へと手をかけました。


「ニュー! まったく、何処行ったのよあの白うさぎ!!」

パタパタと走っていくブルーベルは、塀の上にいるトリカブトに気づく事はありませんでした。



晴れた日に不思議の国へ?
「ぼばっ、こ、こわかった……」
「ん~、ブルーベル遅いね? 早くフラミンゴのクロッケーしたいのに」


元ネタ 『不思議の国のアリス』

キャスト

アリス:ブルーベル
姉、ハートの女王:白蘭
白うさぎ:デイジー
帽子屋:桔梗
三月うさぎ:ザクロ
ハンプティ・ダンプティ:トリカブト


end
(2010/03/19)
葵様リク『桔ザクのアリスパロ』
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