パロ系
……あるところに、ブルーベルという人魚姫がいました。
海上へと行く許可の下りたブルーベルは、さっそく上を目指しました。
「何でついてくるのよ」
頬を膨らませ、ムッスリと怒るブルーベルは睨みます。
そんなブルーベルの不機嫌さを流しつつ、年上の人魚であるザクロは、ニヤリと笑いながら言いました。
「バーロー、ガキには子守が必要だろ?」
「ガキじゃないわよ!」
キッと睨みつけてから上へと泳ぎだすブルーベル、その後をため息をついてからザクロはついていきました。
「いつまで上にいる気だよ、干からびるぞ?」
「うるさいのよ! まだ見てても良いでしょ!」
いつまでも上に顔を出しているブルーベルに注意をしたザクロは、ブルーベルが見ていたものに気付き呆れました。
「何だ、人間にでも惚れるきか?」
「ニュ……」
ブルーベルが目で追っていたのは一隻の船。
同じように船を見たザクロは、甲板へと出ている人物を見ながら、つぶやきました。
「かなわねーから止めとけバーロー」
その後も暫く、船を眺めているブルーベルに何となく付き合いながら。
ふと雲行きが怪しくなってくるのを感じたザクロはブルーベルに忠告をしました。
「嵐が来るぞバーロー」
「先に戻ってれば良いでしょ」
「そーするぜ、お前も波にのまれない様に早く戻れよ、電波ちゃん」
「電波はどっちよ! 波になんかのまれるわけ無いでしょ!!」
舌を出しながら威嚇するブルーベルに苦笑しながらザクロは先に戻って行きました……
「で、何やってんだバーロー」
「ニュ、見てないで助けなさいよ!」
予想通り海上では嵐がおき、海の中に船の残骸と思えるものが沈んでくる中。
自分よりも遥かに大きいモノを抱えたブルーベルを見てザクロは呆れながら言いました。
「素直に運びきれねぇって言えよ……」
仕方なく手伝うザクロの手助けもあり、ブルーベルは陸へと王子を運びました。
陸へと運んだ王子の傍らで、ブルーベルはジッと王子を見ていました。
「おーい、脈も呼吸も安定してんだよ、いつまでへばりついてる気だよバーロー」
「……ねぇ、人間になる薬貰って来て」
「ああ?」
「早く貰って来てよ」
明らかにものを頼む態度ではなかったが、ブルーベルの様子に何となく気付いたザクロはからかう様に口を開きました。
「何だ? 電波ちゃん惚れたのか?」
「ニュッ、う、うるさい! 早く貰って来てよ!!」
図星を指されたブルーベルは、真っ赤になりながら怒鳴りました。
「あいつ、思いっきり殴りやがったな……」
ブルーベルに殴られながら薬を貰って来るように頼まれたザクロは、しぶしぶ魔法使いのもとへと行きました。
「ハハン、どうしましたかザクロ?」
「桔梗、人間になる薬を寄越せ」
馴染みの魔法使いである桔梗に、ザクロは単刀直入に言いました。
「人間に、なりたいのですか?」
「ああ……」
ブルーベルの奴がな、と続く言葉は桔梗の目によって続けることができませんでした。
「ハハン、では対価が必要ですね」
すぐに外された視線、一瞬だけ見えたのは凍りつきそうなほど冷たい目。
気のせいだと思い、頭を振って桔梗に言葉を返します。
「何が必要だ?」
過去に人間へとなりたい人魚から桔梗が取った対価は声。
声だとしたら後でブルーベルが払うのだろう。
煩い声が無いだけボロが出なくなるな、と軽く考えながら聞きました。
「全てをください」
「……普通、声だろ?」
「ハハン、声だけでは足りませんよ、髪の一筋にいたるまで、全てが対価です」
「随分とでかい対価だなバーロー」
眉を寄せて睨みながら、ザクロは桔梗に聞き返しました。
そんなザクロを見ながら、桔梗は妖しく微笑みながら近づきます。
「あなたが、人間になりたいと言わなければ良かったのですよ」
手を伸ばし、ビクリと動いた首筋にそっと指を這わせながら。
凍り付きそうなほど狂おしい目でザクロを捕らえた桔梗は、さらに笑みを深めながら囁きかけました。
「人間のもとへ……いえ、私のもとから離れようとしなければ、こんな事にならずにすみましたよ」
「桔梗ッ……」
「いつまで待たせる気よ!!」
驚いた二人は、長い髪をなびかせながら入って来たブルーベルを振り返りました。
「遅いのよ!!」
「バーロー、元々テメーが来れば良かったんだろ」
痺れを切らして来たブルーベルに対して、桔梗に勘違いをされたザクロは不貞腐れながら言いました。
「ハハン、ブルーベルが薬を欲しかったのですか?」
「そうよ、早くちょうだい桔梗、それでびゃくらん王子に会いに行くの!」
「それでしたら、対価はいりませんよブルーベル」
ニッコリと先ほどの妖しい笑みではない笑みを向け、ブルーベルに薬を渡す桔梗。
「やった! ありがとう桔梗!!」
薬を渡されたブルーベルは早々に海上へと戻って行きました。
「桔梗、テメーさっきと態度がちげーだろバーロー」
自分の時とブルーベルの時とで明らかに態度の違う桔梗に、睨みながらザクロは言いました。
「ハハン、貴方が誰が薬を使うのかを、先に言えば良かったのですよ」
「仮に俺が使うんだったら、また法外な対価を吹っ掛けるのかよ?」
ザクロの言葉に、周囲から毒のような禍々しい薬がたなびく中。
桔梗は目を細めながら笑いました。
「その時は、そんな考えをおこさないようにして差し上げますよ」
人魚と薬
対価は、時と場合によりけり
元ネタ 『人魚姫』
キャスト
人魚姫:ブルーベル
姉?:ザクロ
魔女:桔梗
王子:白蘭
end
(2010/02/14)
海上へと行く許可の下りたブルーベルは、さっそく上を目指しました。
「何でついてくるのよ」
頬を膨らませ、ムッスリと怒るブルーベルは睨みます。
そんなブルーベルの不機嫌さを流しつつ、年上の人魚であるザクロは、ニヤリと笑いながら言いました。
「バーロー、ガキには子守が必要だろ?」
「ガキじゃないわよ!」
キッと睨みつけてから上へと泳ぎだすブルーベル、その後をため息をついてからザクロはついていきました。
「いつまで上にいる気だよ、干からびるぞ?」
「うるさいのよ! まだ見てても良いでしょ!」
いつまでも上に顔を出しているブルーベルに注意をしたザクロは、ブルーベルが見ていたものに気付き呆れました。
「何だ、人間にでも惚れるきか?」
「ニュ……」
ブルーベルが目で追っていたのは一隻の船。
同じように船を見たザクロは、甲板へと出ている人物を見ながら、つぶやきました。
「かなわねーから止めとけバーロー」
その後も暫く、船を眺めているブルーベルに何となく付き合いながら。
ふと雲行きが怪しくなってくるのを感じたザクロはブルーベルに忠告をしました。
「嵐が来るぞバーロー」
「先に戻ってれば良いでしょ」
「そーするぜ、お前も波にのまれない様に早く戻れよ、電波ちゃん」
「電波はどっちよ! 波になんかのまれるわけ無いでしょ!!」
舌を出しながら威嚇するブルーベルに苦笑しながらザクロは先に戻って行きました……
「で、何やってんだバーロー」
「ニュ、見てないで助けなさいよ!」
予想通り海上では嵐がおき、海の中に船の残骸と思えるものが沈んでくる中。
自分よりも遥かに大きいモノを抱えたブルーベルを見てザクロは呆れながら言いました。
「素直に運びきれねぇって言えよ……」
仕方なく手伝うザクロの手助けもあり、ブルーベルは陸へと王子を運びました。
陸へと運んだ王子の傍らで、ブルーベルはジッと王子を見ていました。
「おーい、脈も呼吸も安定してんだよ、いつまでへばりついてる気だよバーロー」
「……ねぇ、人間になる薬貰って来て」
「ああ?」
「早く貰って来てよ」
明らかにものを頼む態度ではなかったが、ブルーベルの様子に何となく気付いたザクロはからかう様に口を開きました。
「何だ? 電波ちゃん惚れたのか?」
「ニュッ、う、うるさい! 早く貰って来てよ!!」
図星を指されたブルーベルは、真っ赤になりながら怒鳴りました。
「あいつ、思いっきり殴りやがったな……」
ブルーベルに殴られながら薬を貰って来るように頼まれたザクロは、しぶしぶ魔法使いのもとへと行きました。
「ハハン、どうしましたかザクロ?」
「桔梗、人間になる薬を寄越せ」
馴染みの魔法使いである桔梗に、ザクロは単刀直入に言いました。
「人間に、なりたいのですか?」
「ああ……」
ブルーベルの奴がな、と続く言葉は桔梗の目によって続けることができませんでした。
「ハハン、では対価が必要ですね」
すぐに外された視線、一瞬だけ見えたのは凍りつきそうなほど冷たい目。
気のせいだと思い、頭を振って桔梗に言葉を返します。
「何が必要だ?」
過去に人間へとなりたい人魚から桔梗が取った対価は声。
声だとしたら後でブルーベルが払うのだろう。
煩い声が無いだけボロが出なくなるな、と軽く考えながら聞きました。
「全てをください」
「……普通、声だろ?」
「ハハン、声だけでは足りませんよ、髪の一筋にいたるまで、全てが対価です」
「随分とでかい対価だなバーロー」
眉を寄せて睨みながら、ザクロは桔梗に聞き返しました。
そんなザクロを見ながら、桔梗は妖しく微笑みながら近づきます。
「あなたが、人間になりたいと言わなければ良かったのですよ」
手を伸ばし、ビクリと動いた首筋にそっと指を這わせながら。
凍り付きそうなほど狂おしい目でザクロを捕らえた桔梗は、さらに笑みを深めながら囁きかけました。
「人間のもとへ……いえ、私のもとから離れようとしなければ、こんな事にならずにすみましたよ」
「桔梗ッ……」
「いつまで待たせる気よ!!」
驚いた二人は、長い髪をなびかせながら入って来たブルーベルを振り返りました。
「遅いのよ!!」
「バーロー、元々テメーが来れば良かったんだろ」
痺れを切らして来たブルーベルに対して、桔梗に勘違いをされたザクロは不貞腐れながら言いました。
「ハハン、ブルーベルが薬を欲しかったのですか?」
「そうよ、早くちょうだい桔梗、それでびゃくらん王子に会いに行くの!」
「それでしたら、対価はいりませんよブルーベル」
ニッコリと先ほどの妖しい笑みではない笑みを向け、ブルーベルに薬を渡す桔梗。
「やった! ありがとう桔梗!!」
薬を渡されたブルーベルは早々に海上へと戻って行きました。
「桔梗、テメーさっきと態度がちげーだろバーロー」
自分の時とブルーベルの時とで明らかに態度の違う桔梗に、睨みながらザクロは言いました。
「ハハン、貴方が誰が薬を使うのかを、先に言えば良かったのですよ」
「仮に俺が使うんだったら、また法外な対価を吹っ掛けるのかよ?」
ザクロの言葉に、周囲から毒のような禍々しい薬がたなびく中。
桔梗は目を細めながら笑いました。
「その時は、そんな考えをおこさないようにして差し上げますよ」
人魚と薬
対価は、時と場合によりけり
元ネタ 『人魚姫』
キャスト
人魚姫:ブルーベル
姉?:ザクロ
魔女:桔梗
王子:白蘭
end
(2010/02/14)