パロ系

……あるところに、デイジーと言う少年がいました。
遺産相続を不公平に行われた少年は、一匹の白猫とウサギの縫いぐるみと少しだけのお金を渡され、家を追い出されました。

「はぁ……トリカブトもブルーベルも酷いよ…」

しょんぼりとした様子で歩いている少年は、ウサギの縫いぐるみを抱えながら途方に暮れていました。

「あれ、白猫は?」

ふと、気が付くと傍を歩いていた白猫の姿がいなくなっていました。
キョロキョロと見渡すと、靴屋の前に座っていました。

「こんな所にいたんだ…」

白猫がジッと見つめる先には、一足の黒いブーツがありました。

「欲しいの?」

少年が白猫に聞くと、肯定でもするかのように白猫は鳴きました。

「……じゃぁ、少し待っててね?」

少年は、渡された少しだけのお金を使い、白猫に合うサイズの黒いブーツを買いました。
白猫の前にブーツを置くと、白猫はブーツに足を入れました。
すると、小さな爆発音と共に白猫の周りは煙に包まれました。

「ぼっばっ!?」

煙がはれると、そこには白い服に黒いコートを着た美しい人物がいました。

「ハハン、ようやく話せるようになりました」

白い猫耳をパタリと動かしながら、元白猫だった人物は優雅に一礼しました。

「靴をありがとうございました、私は桔梗、以後お見知りおきを…………デイジー?」
「…………」

泡を吹きながら気絶をしている少年を不思議そうに眺めてから、さっそく、ブーツを履いた白猫は行動をしました。

行動する、と言っても白猫は少年を川の中に放り込み、傍を通りかかった貴族に拾わせ。
少年のその後を見ずに、以前から気になっていた森へと歩いていっただけでした。

その森には、悪魔が住んでいる、などと言われ近づく者は誰もいません。


「ハハン、ここですか」

昼でさえも暗い森を歩いて行った白猫は、森の奥で悠然とたたずむ城の扉を開けました。


「バーローッ! テメーそこで何してやがる!!」
「そんなに怒鳴らなくても聞こえていますよ?」

怒鳴ったのは森の奥に住むと言われていた悪魔。
しかし、無断で入ったはずの白猫は悪びれもせず言葉を返しました。


「……もう少し、普通の姿にはできないのですか?」


鋭くとがった爪、裂けた口もと。
悪魔と言われているだけあり、その姿は人外の姿をしていました。

「あ? 何だバーロー、勝手に入ってきたくせに、随分な言い様だな」
「ハハン、まさか人に恐れられる森の悪魔が、猫にさえできる事ができないとは思わなかったので、つい……」

神経を逆撫でする白猫に頭にきた悪魔は怒鳴り返しました。


「何だとバーローッ! いいか、そこで見てろよ! テメーなんかよりもっと人間らしくなってやるぜ!!」


ビシリと白猫に指をさした悪魔は、言うが早いか見る見るうちに人間の姿へと変わっていきます。
血のように赤い髪や目はそのままに、人間の姿へと変わった悪魔は得意そうに笑いました。


「どうだバーロー、猫の耳と尻尾残してるお前とは格が違うだろ?」
「ハハン、その姿で人以上の力を出せるなら、完璧とは言いませんよ?」
「ああ? うるせーなぁ」

白猫からの指摘に眉を寄せながら言った悪魔は、力の元である指輪を外しました。

「今度こそどうだバーロー? これで人間と変わらねぇぜ」
「……ええ、よく解りました」

ニッコリと笑った白猫は悪魔が外した指輪を取り上げ、床へと投げました。


「ッ!? 何しやがんだテメー!!」


油断をしていた悪魔は白猫の行動に驚き、怒鳴りながら白猫の胸倉を掴みますが。
力の元である指輪を持たない悪魔の力は非力でした。
嬌笑しながら悪魔の腕を捕らえた白猫は、しなやかな尾を揺らしながら囁きかけました。



ブーツを履いた白猫
「人間並みの力しか持たない貴方を……食べるためですよ」


元ネタ 『長靴をはいた猫』

キャスト

猫:桔梗
飼い主:デイジー
悪魔:ザクロ


end
(2010/01/27)
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