小話

◆風鈴


かすかに響くのは涼しげな音
「何の音だバーロー」
暑過ぎてダレて机に突っ伏していた顔を上げ、音の正体を探すと、
窓際で何かを吊るしている桔梗の姿があった。
「ハハン、少しは涼しくなりましたか?」
「何持ってんだバーロー」
「風鈴ですよ、白蘭様が配り歩いていました」
「そんなもんよりクーラーつけろ」
「省エネの一環です、我慢してください。あまり機械に頼ると体が鈍ってしまいますよ?」
「汗1つかかねーお前が変だろ」
悪態をつくにも体力を使うとばかりに、また机に突っ伏していると、
窓からそよ風が入り込み、風鈴が繊細な音を奏でた。

風鈴
結論は、暑いものは暑い。


end


◆浴衣


「面倒くせーなバーロー」
「ハハン、せっかく白蘭様のご好意により頂いたものですよ?」
「だからってなー浴衣ぐらい一人で着れるぜ?」
「死人の着方になっていた人物は黙って動かないでいてください」
反論を笑みにより黙らせた桔梗は、器用にザクロの着付けを進めていった。
「女物でなくてよかったですね、ブルーベルの着付けには手間取りました」
「そーかよ、で? 終わったかバーロー?」
「ええ、出来ましたよ。このまま押し倒したくなるほど扇情的な姿ですね」
ザクロの姿を眺めながら言う桔梗。
その言葉に、反射的にザクロは相手の頭を叩いた。

浴衣
着方を覚えてみましょう。


end


◆朝顔
ブル+桔ザク


「ニュニュ~、まだ芽がでないの?」
「ハハン、どうしたんですかブルーベル」
じっと鉢植えを見ながら頬を膨らませるブルーベル。
その様子に、桔梗は軽く声をかけた。
「桔梗、朝顔がさっき種蒔いたのに、ぜんぜん芽を出さないの!」
「それは……少し気が早すぎますよ」
「晴れの炎でもデイジーに頼もうかしら?」
真剣に悩むブルーベルに、しかたありませんねと桔梗はため息をついた。

クーラーの利く部屋で、惰眠を貪っていたザクロは、ピクリと身動ぎをした。
「ん……ァッ…なんだ!?」
「ニュ! ザクロ動くな!」
「ハハン、ブルーベルが花の観察をしたいと言うものですから」
「人の体にビュンビュン草巻きつかせて言う言葉かバーロー!!」

朝顔
手抜きはしないように。


end


◆金魚


「赤いくせに金魚かよ」
じっと眺め、金魚に狙いを定めていたザクロがポツリと呟いた。
金魚すくいに挑戦するザクロを隣で見ていた桔梗は、苦笑してから答えた。
「ハハン、理由は諸説あるようですが有力なのは、西暦3~4世紀頃の中国で、突然変異した黄赤色のフナがとれ、光の加減で金色に見えた事から」
「あー、もういいぜバーロー、それ以上言うな」
制止するザクロに、そうですかと軽く了解した桔梗は、またザクロの様子を眺めた。
「ザクロ」
「何だ?」
「先程から一匹もすくえないようですが、代わりましょうか?」
「…………心配いらねーぜ、今破れたからな」
振り返っている間に金魚により破られたポイを眺め。
ちまちましたものは自分には合わないとザクロは割り切った。

金魚
コツ以前の問題。


end
(2010/08/31)
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