小話

◆春はあたたかいので
(兎桔梗×狼ザクロ)


「お前の方が草食系だろ、食べられたいのかよバーロー?」
耳を甘噛みしてくる白兎の桔梗に尋ねた。
「ハハン、何を心配しているのですか?」
「だから……ッいい加減にしろバーロー!」
いつまでも止めようとしない桔梗に苛立ち、押し退けようと手を出した。
「貴方は心配するところがズレていますよ」
「あ?」
伸ばした手を逆に捕まえられ、抱きすくめられる様に迫られた。
「草食だからと言って、必ずしも食べられるとは限りませんから」
「ッ、ちょっとまて、何処触ってんだ……」
「気を許した、貴方が悪いんですよ?」

春はあたたかいので
もっとも、兎は年中発情期ですが


end


◆毛づくろいだけで良い
(兎桔梗×狼ザクロ)


「貴方は淡白ですね?」
不思議そうに聞いてくる桔梗を、
ぐったりとしながら、恨めしげに見上げる。
「お前が、性欲強すぎんだよバーロー……」
「ハハン、そうですか?」
「だいたいなー…………もういい、だりぃ」
とにかく、倦怠感が強かったので、
目を閉じて、眠気に身を任せようとしたら、
ペロリと耳を舐められた。
「毛づくろいでも、して差し上げましょうか?」
「あー? ……たのむ」

毛づくろいだけで良い
それだけで良いからな、他の事をしようとするなよ?


end


◆転んでもただでは起きない
(猫桔梗×ザクロ)


「……ハハン、猫耳…ですか」
頭に違和感を感じ、触るとフワフワとした感触。
「おや、尻尾もですか」
意思とは関係なく。
感情の持ちようによって動くしなやかな白い尾。
「ザクロについていれば、こんなにもおいしいものはないのですが……」
本当に、悔やんでも悔やみきれないことですね、と内心で呟いた。
「……ハハンッ、獣姦もどきもいいかもしれませんね?」
ポツリと呟かれた言葉は、隣で寝ているザクロには聞こえていなかった。

転んでもただでは起きない
おきるわけもない


end


◆信じる者は救われる?
(猫桔梗×ザクロ)


「……夢だなバーロー」
一人納得したザクロは、また布団をかぶり目を閉じた。
「ハハン、寝ようとしないでください、現実ですよ?」
「夢に決まってんだろ! 誰が朝起きて、真っ先に見た相手に猫耳が生えてるなんて思うんだ!?」
目を必死に閉じ寝ようとするザクロ。
そんな様子を眺めながら、桔梗の尾はゆっくりと揺れた。
「現実だと分かってもらうためには……貴方の体で体験していただかないといけませんか?」
ゾクリとするほど低音で囁かれた言葉に、ザクロは布団を取り跳ね起きた。
「お、お前が言うなら現実だな、バーロォ」
「ハハン、惜しいですね、せっかく新しいプレイができると思ったのですが」

信じる者は救われる?
一難去ってまた一難……


end
(2010/05/31)
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