小話
◆羽子突き
「反則だろバーロー!!」
「ハハン、負け惜しみですか?」
羽子板を置き、墨をたっぷりと付けた筆を持った桔梗は、睨みつけてくるザクロへと訊いた。
「ビュンビュン草使って勝ったテメーに言われたくねぇ! 匣使用可なら始めから言え!!」
「使用不可とは始めから言っていませんよ? それから、動かないでください」
「納得できるか!」
文句を言っている間に、大きく頬に×印を描かれたザクロ。
ザクロの顔に所狭しと描かれた墨の跡を眺め、桔梗は笑いを噛み殺しながら話を逸らそうとした。
「向こうはブルーベルが勝ちそうですね」
「ああ?」
桔梗が指し示す方を向くと、修羅開匣をしているブルーベルがいた。
「ボンバ・アンモニーテ!!」
「ぼばっ! 修羅開匣なんてずるいよぉ!?」
攻撃を避けるのに精一杯のデイジーが落とした羽子を見て、ブルーベルは嬉々として筆を準備し始めた。
「あちらはルールをよく分かっているようですね」
「いや、デイジーの奴は絶対分かってねーぜバーロォ。つーか、修羅開匣もありかよ……」
end
◆カルタ会
「……花の色は」
低くよく通る声で詠まれる上の句。
一瞬の間をおいて室内に音が鳴り響いた。
「バーロォ!! そりゃ俺が取ろうとしてたのだろ!!」
「ハハン、手を触れなければ取った事にはなりませんよ?」
「……有り明けの」
「待てトリカブト!! まだ準備ができてねーだ「遅いですよ、ザクロ」
「ニュ~、文字ばっかでつまんない!!」
「僕チン達はカルタにしようよ、ブルーベル……」
end
◆干支
「正チャンから聞いたんだけど、今年は兎年なんだって」
ニコニコと笑いながら唐突に言った白蘭。
暫くの間沈黙してからザクロは口を開いた。
「あの……白蘭さ――」
「いけません、ザクロ。あれは指摘されるのを待っているのですから」
ザクロの口を塞ぎ、小声で忠告する桔梗。
その顔は心底呆れていた。
「ニュ? びゃくらん可愛い! ブルーベルもそれつける!!」
「ハハハッ! やっぱりそう思うよね? いっぱいあるから皆でつけようか」
何処にあったのか、パッと手に持つ兎耳の飾り。
それを見た瞬間にザクロは小声で呟いた。
「……おい、逃げるぞバーロー」
「ハハン、賛成です」
「桔梗チャン達も、勿論つけるよね?」
「「ッ!?」」
end
◆姫始
「姫始でもするか?」
「はい?」
「じゃ、用意してくるぜバーロー」
一瞬言われた言葉がわからず聞き返すようにザクロへと返事をした桔梗。
その返事を了解と取ったのか、スタスタとザクロは部屋を出て行った。
「……姫始、ですか?」
既に室内にいないザクロへと問うように桔梗は呟いた。
姫始の一般に使われている意味は知っているが、まさかザクロから言われるとは思わなかった。
「ハハン、素直に受け取って良いものなのでしょうか……?」
ザクロから誘われる事は嬉しいが、何処か素直に喜べない。
その原因が何なのか小一時間ほど考えていると、出て行ったザクロが戻ってきた。
「バーロォ、考え事か?」
「……予想通り過ぎる展開に少し安心しました」
茶碗に盛られた姫飯を前に、桔梗は疲れたように呟いた。
「ザクロ、姫始の意味を言っていただけますか?」
「何だバーロー。正月に姫飯を食べる以外になんかあんのか?」
「白蘭様が言ったのですね?」
「当たり前だろ」
end
(2011/01/01)
「反則だろバーロー!!」
「ハハン、負け惜しみですか?」
羽子板を置き、墨をたっぷりと付けた筆を持った桔梗は、睨みつけてくるザクロへと訊いた。
「ビュンビュン草使って勝ったテメーに言われたくねぇ! 匣使用可なら始めから言え!!」
「使用不可とは始めから言っていませんよ? それから、動かないでください」
「納得できるか!」
文句を言っている間に、大きく頬に×印を描かれたザクロ。
ザクロの顔に所狭しと描かれた墨の跡を眺め、桔梗は笑いを噛み殺しながら話を逸らそうとした。
「向こうはブルーベルが勝ちそうですね」
「ああ?」
桔梗が指し示す方を向くと、修羅開匣をしているブルーベルがいた。
「ボンバ・アンモニーテ!!」
「ぼばっ! 修羅開匣なんてずるいよぉ!?」
攻撃を避けるのに精一杯のデイジーが落とした羽子を見て、ブルーベルは嬉々として筆を準備し始めた。
「あちらはルールをよく分かっているようですね」
「いや、デイジーの奴は絶対分かってねーぜバーロォ。つーか、修羅開匣もありかよ……」
end
◆カルタ会
「……花の色は」
低くよく通る声で詠まれる上の句。
一瞬の間をおいて室内に音が鳴り響いた。
「バーロォ!! そりゃ俺が取ろうとしてたのだろ!!」
「ハハン、手を触れなければ取った事にはなりませんよ?」
「……有り明けの」
「待てトリカブト!! まだ準備ができてねーだ「遅いですよ、ザクロ」
「ニュ~、文字ばっかでつまんない!!」
「僕チン達はカルタにしようよ、ブルーベル……」
end
◆干支
「正チャンから聞いたんだけど、今年は兎年なんだって」
ニコニコと笑いながら唐突に言った白蘭。
暫くの間沈黙してからザクロは口を開いた。
「あの……白蘭さ――」
「いけません、ザクロ。あれは指摘されるのを待っているのですから」
ザクロの口を塞ぎ、小声で忠告する桔梗。
その顔は心底呆れていた。
「ニュ? びゃくらん可愛い! ブルーベルもそれつける!!」
「ハハハッ! やっぱりそう思うよね? いっぱいあるから皆でつけようか」
何処にあったのか、パッと手に持つ兎耳の飾り。
それを見た瞬間にザクロは小声で呟いた。
「……おい、逃げるぞバーロー」
「ハハン、賛成です」
「桔梗チャン達も、勿論つけるよね?」
「「ッ!?」」
end
◆姫始
「姫始でもするか?」
「はい?」
「じゃ、用意してくるぜバーロー」
一瞬言われた言葉がわからず聞き返すようにザクロへと返事をした桔梗。
その返事を了解と取ったのか、スタスタとザクロは部屋を出て行った。
「……姫始、ですか?」
既に室内にいないザクロへと問うように桔梗は呟いた。
姫始の一般に使われている意味は知っているが、まさかザクロから言われるとは思わなかった。
「ハハン、素直に受け取って良いものなのでしょうか……?」
ザクロから誘われる事は嬉しいが、何処か素直に喜べない。
その原因が何なのか小一時間ほど考えていると、出て行ったザクロが戻ってきた。
「バーロォ、考え事か?」
「……予想通り過ぎる展開に少し安心しました」
茶碗に盛られた姫飯を前に、桔梗は疲れたように呟いた。
「ザクロ、姫始の意味を言っていただけますか?」
「何だバーロー。正月に姫飯を食べる以外になんかあんのか?」
「白蘭様が言ったのですね?」
「当たり前だろ」
end
(2011/01/01)