その他
「んー? 一番乗り……でもなかったか」
ミルフィオーレの会議室の扉を開けたγは、先客達を見た。
「桔梗チャンはあれだけザクロ君の近くにいるのに何も解ってないね?」
「ハハンッ、いくら白蘭様のお言葉といえど……」
言い合いをするような会話に、埒が明きそうにないなと思いながらγは切り出した。
「あー……こんな所で何してんだ?あんたら?」
「やあγ君、いたんだ」
ヘラっとした態度で笑う白蘭。
そんなもんで誤魔化されるかよと言いたくなりながらγは白蘭の隣にいる人物に目を一瞥してから訊いた。
「これから会議があるってのに、随分とまー、派手な人物がいるもので?」
「ハハンッ、会議、ですか? そんなものよりもっと真剣に私は白蘭様と話しているのですが?」
「……そんなものかよ」
何処の隊の奴だと訝しみながらγは桔梗を眺めた。
黒い隊服はブラックスペルの様にも見えるが、見た覚えが無い。
ましてや、隊長格に対して冷ややかな目を向けることの出来る人物はホワイトスペル内でもそれほどいないはずだった。
「ねぇ、それよりγ君はどう思うかな?」
「は?」
「君も時々会うんじゃないかな? ザクロ君に」
「ザクロ?」
そりゃ果物の名前だろと言いたくなったが、ふとその名前に近い髪色の人物を思い出した。
名前は知らないが、極稀に紅い髪色の無精髭の男に目を引かれた事はあった。
「その顔だとやっぱり知ってるみたいだね? で、此処からが本題なんだけど……ザクロ君の魅力って何だろうね? って桔梗チャンと話してたんだ」
「魅力?」
魅力か……と心内で繰り返しながらγは押し黙った。
「白蘭様、やはりこの者には無理かと思いますが?」
「そんな事いっちゃダメだよ桔梗チャン。少しでもザクロ君を見たことのあるγ君なら解るよ、きっと」
「ハハン、そうだと――」
「あの独特の背徳感にも似た空気だと俺は思うが?」
答えられる訳が無いと思っていた人物からの言葉に、軽く目を見開きながら桔梗はγを見た。
一方、サラリと答えたγは続きを促されているのかと思い話を続けた。
「だから、あの気だるさってのか? 何処となく艶のある姿が目を引く一番の理由だと俺は思うぜ」
「γ君、目を引く理由なんてザクロ君の全てが目を引く理由に決まってると思うけど?」
「白蘭様。全て、ですか? それではあまりにも説明を省いているかと思いますが?」
「だって、ほら桔梗チャン。ザクロ君てそこにいるだけで自然と目がザクロ君を追っていくから」
「まてまて。俺はただ一つの意見として言っただけだ、そう言うあんたはどうなんだ?」
また水掛け論になりそうな言い合いの始まりに、γは慌てて話を遮った。
今まで棘のある言い方をしていた桔梗は、γからの質問に対し呆れ顔でため息をついた。
「艶のある姿と背徳感すら覚える気だるさ、ですか? 一面性だけしか見ていない方にはその程度しか解らないと言うことですね」
嫣然と微笑みながら、その実、小馬鹿にした態度で桔梗はγを見返した。
その態度に、自分で話を振ったはずのγは何と無くムッとしながら桔梗の話の続きを聞いた。
「ザクロの一番の魅力は、その一見大人しやかに見える渋い態度の時と、感情を露にする子供のような態度の時とのギャップにあると私は思います」
「うん、そうだね桔梗チャン。僕もその意見には賛成だよ。ザクロ君のあのギャップの差は凄いと思うよ。外見が渋く見える分性格を知った時との差は、知る前が冷静とか余裕を持った大人だと見えてたのが嘘みたいに180度以上変わって可愛いとすら見えちゃうんだから」
「見える? 白蘭様。見えるのではなく、ザクロは可愛い存在ですよ?」
「あの…――」
「桔梗チャン、物の喩えって言う言葉を知らないのかな?」
「ハハン、先程の言葉では気付くまでは可愛いと見えていなかったと言っている様に聞こえたものですから」
「……あの、すみませ――」
「ほぉ、そんなに可愛いんじゃ、次に会った時にでも飲みに誘うか」
「γ君、機会があるなんて思わない方がいいよ?」
「すみません! 会議の時間が迫ってるんですけど!? 白蘭さん!!」
「ん? あれ、どうしたの正チャン?」
飄々とした態度で接する白蘭に、先程まで完璧に存在を無視されていた正一は、若干腹部が痛くなりながら丁寧に申し出た。
「あの……すみませんが会議の時間が迫ってるんで、くだらない内容の話ならそろそろ止めてもらえませんか?」
「ハハン、何処がくだらないと言うのですか?」
「そうだよ正チャン、くだらないなんて言っちゃダメだよ?」
「俺も同意見だな、ホワイトスペル第2ローザ隊の隊長さんよ」
何議論?
『うわっ…! この人達本気だ……と、言うか何の議論!?』
end
(2010/12/21)
ミルフィオーレの会議室の扉を開けたγは、先客達を見た。
「桔梗チャンはあれだけザクロ君の近くにいるのに何も解ってないね?」
「ハハンッ、いくら白蘭様のお言葉といえど……」
言い合いをするような会話に、埒が明きそうにないなと思いながらγは切り出した。
「あー……こんな所で何してんだ?あんたら?」
「やあγ君、いたんだ」
ヘラっとした態度で笑う白蘭。
そんなもんで誤魔化されるかよと言いたくなりながらγは白蘭の隣にいる人物に目を一瞥してから訊いた。
「これから会議があるってのに、随分とまー、派手な人物がいるもので?」
「ハハンッ、会議、ですか? そんなものよりもっと真剣に私は白蘭様と話しているのですが?」
「……そんなものかよ」
何処の隊の奴だと訝しみながらγは桔梗を眺めた。
黒い隊服はブラックスペルの様にも見えるが、見た覚えが無い。
ましてや、隊長格に対して冷ややかな目を向けることの出来る人物はホワイトスペル内でもそれほどいないはずだった。
「ねぇ、それよりγ君はどう思うかな?」
「は?」
「君も時々会うんじゃないかな? ザクロ君に」
「ザクロ?」
そりゃ果物の名前だろと言いたくなったが、ふとその名前に近い髪色の人物を思い出した。
名前は知らないが、極稀に紅い髪色の無精髭の男に目を引かれた事はあった。
「その顔だとやっぱり知ってるみたいだね? で、此処からが本題なんだけど……ザクロ君の魅力って何だろうね? って桔梗チャンと話してたんだ」
「魅力?」
魅力か……と心内で繰り返しながらγは押し黙った。
「白蘭様、やはりこの者には無理かと思いますが?」
「そんな事いっちゃダメだよ桔梗チャン。少しでもザクロ君を見たことのあるγ君なら解るよ、きっと」
「ハハン、そうだと――」
「あの独特の背徳感にも似た空気だと俺は思うが?」
答えられる訳が無いと思っていた人物からの言葉に、軽く目を見開きながら桔梗はγを見た。
一方、サラリと答えたγは続きを促されているのかと思い話を続けた。
「だから、あの気だるさってのか? 何処となく艶のある姿が目を引く一番の理由だと俺は思うぜ」
「γ君、目を引く理由なんてザクロ君の全てが目を引く理由に決まってると思うけど?」
「白蘭様。全て、ですか? それではあまりにも説明を省いているかと思いますが?」
「だって、ほら桔梗チャン。ザクロ君てそこにいるだけで自然と目がザクロ君を追っていくから」
「まてまて。俺はただ一つの意見として言っただけだ、そう言うあんたはどうなんだ?」
また水掛け論になりそうな言い合いの始まりに、γは慌てて話を遮った。
今まで棘のある言い方をしていた桔梗は、γからの質問に対し呆れ顔でため息をついた。
「艶のある姿と背徳感すら覚える気だるさ、ですか? 一面性だけしか見ていない方にはその程度しか解らないと言うことですね」
嫣然と微笑みながら、その実、小馬鹿にした態度で桔梗はγを見返した。
その態度に、自分で話を振ったはずのγは何と無くムッとしながら桔梗の話の続きを聞いた。
「ザクロの一番の魅力は、その一見大人しやかに見える渋い態度の時と、感情を露にする子供のような態度の時とのギャップにあると私は思います」
「うん、そうだね桔梗チャン。僕もその意見には賛成だよ。ザクロ君のあのギャップの差は凄いと思うよ。外見が渋く見える分性格を知った時との差は、知る前が冷静とか余裕を持った大人だと見えてたのが嘘みたいに180度以上変わって可愛いとすら見えちゃうんだから」
「見える? 白蘭様。見えるのではなく、ザクロは可愛い存在ですよ?」
「あの…――」
「桔梗チャン、物の喩えって言う言葉を知らないのかな?」
「ハハン、先程の言葉では気付くまでは可愛いと見えていなかったと言っている様に聞こえたものですから」
「……あの、すみませ――」
「ほぉ、そんなに可愛いんじゃ、次に会った時にでも飲みに誘うか」
「γ君、機会があるなんて思わない方がいいよ?」
「すみません! 会議の時間が迫ってるんですけど!? 白蘭さん!!」
「ん? あれ、どうしたの正チャン?」
飄々とした態度で接する白蘭に、先程まで完璧に存在を無視されていた正一は、若干腹部が痛くなりながら丁寧に申し出た。
「あの……すみませんが会議の時間が迫ってるんで、くだらない内容の話ならそろそろ止めてもらえませんか?」
「ハハン、何処がくだらないと言うのですか?」
「そうだよ正チャン、くだらないなんて言っちゃダメだよ?」
「俺も同意見だな、ホワイトスペル第2ローザ隊の隊長さんよ」
何議論?
『うわっ…! この人達本気だ……と、言うか何の議論!?』
end
(2010/12/21)