桔ザク

目の前に、桔梗とザクロがいたとして。
どちらを選ぶと言われたら……私はザクロを選ぶ。

「ブルーベル? どうかしましたか」
「んー、何でもない」

だって、手に入れたいのは綺麗で優しい、上辺だけの花より。
綺麗でも、優しくも無いけど、美味しそうな果物の方が良いから。

『ザクロなんて名前のとおりに、外見は美味しそうじゃないくせに中身は美味しいんだろうな……』

ああ、食べたい。
あの生意気にも美味しそうなザクロを食べてしまいたい。

『でも桔梗しか味を知らないんだろうなー』

どんな味がするだろうか?
きっと、桔梗が手放さないぐらいだ、美味しいに決まっている。
本物の柘榴と違って、酸っぱくも無く、甘いに違いない。


「食べたいなー」


あの、くすんだように見える無気力な目も。
きっと、食べている時は、薄い水滴に覆われて、綺麗に輝くのだろう。


「何がですか、ブルーベル?」
「赤い色の実が欲しいの」
「では、後で苺をもって来ましょう」

クスクスと笑いながら桔梗は子供のたわいない願いだと思ったのだろう。

『違うよ桔梗、ブルーベルが食べたいのは、そんな可愛らしい実じゃないもん』



赤い実をくださいな
早くその手から、手放してよ桔梗?


end
(2010/01/14)
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