その他

何事にも限度がある……
それが例え、恋人と呼ばれる関係にあったとしても。

「ザクロ君、マシマロもっと食べる?」
「勿論です、白蘭様」

本日何十個目かの白い物体を咀嚼しながら、表面上はやや引き攣った笑みを恋人へと向けた。



「呆れを通り越して、感心すらしますよ。貴方の神経に」
「そーかよ」

ぐったりとソファに沈み、同僚の声へとおざなりに返答した。

「甘い物が苦手ならば、早く言った方がいいのでは?」
「分かっちゃいるけどよぉ……」
「際限無く甘い物を食べ続ける人物を恋人にもった故の宿命かもしれませんが。極度の甘い物嫌いがマシュマロ一袋を食べ切ればどうなるか、簡単に想像がつくと思いますよ」
「今まさに実感してるぜバーロー」

コーヒーならばストレートを好み。
甘い物の匂いは嗅ぐだけで気持ちが悪くなる。
現在、口に残る甘ったるい味に、胃がムカムカとしてきている。

「白蘭様自身の匂いは別に何とも思わねーんだけどな……」
「ハハン、恋は盲目もそこまでいくと素晴らしいですね。惚気ならば聞きませんよ」

コーヒーを机へと置く桔梗に、ゆっくりと身を起こし、カップへと手を伸ばした。
香りのよい液体を一気飲みし、口の中の甘ったるい味を流した。


「あー、やっぱりこの味だな」
「今の貴方ならば、エスプレッソでも一気飲みをしそうな勢いですね、胃を傷めますよ」
「お前のが一番美味い気がするぜバーロー」
「ハハンッ、褒めていただき大変に嬉しいですが、お代わりならば自分で淹れなさい」

空のカップを桔梗へと向けるが、あっさりと断られた。
カップを机に置き、口を尖らせてからため息をついた。

「あーあ、世の中から甘いもんが無くなればいいのによぉ」
「ご愁傷様です、とでも言いましょうか?」
「そーかもなバーロォ……んじゃ、白蘭様のとこに行ってくるぜ」

立ち上がり、背を向けながらヒラヒラと片手を振るザクロ。
そんな相手を見送りながら、桔梗は次のコーヒーの準備を始めた。



30分後の注文
「桔梗……コーヒーくれ」
「ハハン、愚かとしか言いようがない気がしますよ、ザクロ」


end
(2010/09/23)
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